稟議の読み方と意味
「稟議」はりんぎと読み、会社や官庁などで、新たに導入したい事項や提案を関係者に回覧し、承認を得ることを指します。
「稟」は「申し出る」「受ける」「授かる」という意味を持ち、「議」は「相談する」「議論する」という意味があります。このため、「稟議」は新規事項に関する関係者への申し出と相談を意味します。もともとは「ひんぎ」とも読まれていましたが、慣用読みとして「りんぎ」が定着しました。
稟議の具体的なプロセス
稟議は、主に以下の手順で進められます。
- 提案書の作成:新規プロジェクトや契約に関する詳細を文書化。
- 関係者への回覧:承認が必要な担当者や部署へ順次回覧。
- 各段階の承認:課長・部長・役員などが承認。
- 最終決裁:最終的な意思決定者(社長や取締役など)が承認。
- 施行・実施:承認された内容に基づき業務を実施。
このプロセスを経ることで、組織内での意思決定の透明性と一貫性が確保されます。
稟議の歴史
稟議制度は江戸時代の武家社会にも見られ、藩政において重要な決定をする際に上申文書が回覧されていました。当時は「稟議書」という名称ではなく「伺い書」や「上申書」と呼ばれており、藩主や幕府の上位役職者が決裁していました。
明治時代以降、官庁や企業にも取り入れられ、日本の組織文化に深く根付くようになりました。特に高度経済成長期には、大企業での意思決定において不可欠なシステムとなり、現在に至ります。
稟議のビジネスにおける役割
稟議制度は日本独自の文化として根付いており、以下のようなメリットがあります。
- 意思決定の透明性向上:複数の関係者が承認するため、決定の公平性が保たれる。
- リスク管理の強化:多角的な視点で検討されるため、リスクの見落としが少なくなる。
- コンプライアンスの確保:規則や法律に則った意思決定がなされる。
- 属人的判断の排除:一人の意見ではなく、組織全体での判断を優先。
一方で、承認までに時間がかかるデメリットもあり、近年では電子稟議システムの導入が進められています。
以下の記事では、「稟議」が実際のビジネスの場面で使われる際の詳しい解説をしています。
稟の漢字の意味と成り立ち
稟議の漢字の意味は、稟と議に分かれています。以下では、稟議の漢字の意味と成り立ちを解説しています。
稟(りん、ひん)
- 音読み:りん、ひん
「稟」という漢字には複数の意味があります。主に「申し出る」「受ける」「授かる」という意味を持ちます。
- こめぐら:穀物を保管する倉庫を意味します。
- ふち(扶持):給料として与える米を指します。
- うける:命令を受ける、何かを授かることを意味します。
- もうす:申し上げるという意味で使われます。
漢字の成り立ち
「稟」は、会意文字です。部首の「禾(のぎへん)」は穀物を意味し、旁の「㐭(リム)」は「こめぐら」を表しています。これにより「稟」は「穀倉」や「申し出る」「受ける」という意味を持つようになりました。『説文解字』によれば、「賜なり」として扶持米を意味し、祭祀料として賜わったものを指します。このため、「稟受」「稟命」「稟奏」などの熟語に使用されます。金文の〔大盂鼎〕には「今、我は隹(こ)れ刑(けいりん)に王の正に(つ)く」とあり、賜穀を原義とします。
熟語の例
- 稟議(りんぎ):新規事項について上位者に申し出て相談し、承認を得ること。
- 稟申(りんしん):申し出ること、報告すること。
- 稟告(りんこく・ひんこく):申し出ること。
議の漢字の意味と成り立ち
議(ぎ)
- 音読み:ぎ
- 訓読み:はかる
「議」という漢字は以下のような意味を持ちます。
- 相談する:何かについて意見を交わすこと。
- 議論する:意見を出し合って話し合うこと。
- 意見をまとめる:複数の意見を調整して結論を出すこと。
漢字の成り立ち
「議」は形声文字です。声符の「義(ぎ)」は「正しい」という意味を持ち、部首の「言(ごんべん)」は「言葉」を表しています。この組み合わせにより、「議」は「言葉で正しいことを相談する」という意味になりました。『説文解字』によれば、「語るなり」、また「語は論なり」「論は議(はか)るなり」とあり、「議」は「相談する」という意義を持ちます。
熟語の例
- 議論(ぎろん):意見を出し合って話し合うこと。
- 協議(きょうぎ):特定の問題について関係者が意見を出し合って話し合うこと。
- 合議(ごうぎ):二人以上の者が集まって相談すること。
- 省議(しょうぎ):内閣の各省の会議。または、その議決。
稟議の英語訳
稟議は英語で“Approval process”と言い、
稟議書は英語で“document for approval”と表します。
なお、稟議は日本特有のビジネス文化であるため英語のでの表記には注意が必要です。
「稟議書」の読み方と意味
「稟議書(りんぎしょ)」は、稟議を進めるために作成される文書です。企業や官庁で、提案事項を関係各所に回覧し、上位関係者の承認を得るために使われます。「稟議書」は、新規事項に関する正式な申し出と相談を文書化したものです。
稟議書について以下の記事で詳しく解説しています!
また、「稟議」が含まれる用語についても解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ
「稟議」の正式な読み方は「りんぎ」であり、もともとは「ひんぎ」とも読まれていましたが、慣用読みとして「りんぎ」が定着しました。このプロセスは組織内の新規事項や提案を効率的に進めるために重要です。「稟」という漢字は「申し出る」「命令を受ける」「穀倉」などの意味を持ち、「議」という漢字は「相談する」「議論する」という意味を持ちます。このため、稟議は関係者への申し出と相談を表しています。
参考資料