はじめに
社内の文書手続きでは、申請書に何を書けばよいか分からない、どの書式を使うのか迷う、誰に出せばよいのか判断に困る、承認が止まったまま放置される、文書が共有されず行き違いが起きる、保存ルールを守ろうとすると手間もコストもかかる──1つ1つは「ちょっとした問題」に見えますが、多くの人が関わることで、その影響は積もってきます。
ワークフローシステムは、こうした現場のつまずきを、ルールや制度の話ではなく、実務の中で「迷わせない・止まらせない・探させない」仕組みとして解決する力を持っています。
本記事では、社内文書業務で起こりがちな7つの課題と、それに対してワークフローシステムがどう機能するのかを、わかりやすく整理して紹介します。
課題① 申請書に何を書けばよいのか分からない
背景:なぜ申請内容にばらつきが起きるのか?
■ 事例:書き方の違いで差し戻しが頻発する現場
「“目的”欄が“業務のため”ってだけじゃ判断できないよ……」
「添付ファイルがなかったから、戻すしかないですね」
──これは、経理部の承認担当が毎日繰り返している会話です。
たとえば、打ち合わせ費の精算で、Aさんは「○○商談の接待費」と具体的に書いて申請しましたが、Bさんは「社外対応」とだけ記載。確認のためにBさんにメールで聞き直し、再提出を依頼、さらに修正後に再確認……。
1件あたり5〜10分のやりとりが発生し、1日20件あれば、それだけで1時間半が失われていきます。
■ 原因:書式と記入ルールが統一されていない
このようなばらつきが起きる根本的な理由は、「何を・どう書けばよいのか」が、申請者任せになっていることにあります。
よくある問題点
- 項目名が抽象的すぎて意味が伝わらない(例:「内容」「目的」など)
- 数値・日付欄がフリーテキストになっていて、表記ゆれが発生(例:「5万」「50,000円」「¥50,000」など)
- 必須項目が明示されておらず、記入漏れがあっても提出できてしまう
- そもそも、記入のしかたを教わったことがない(引継ぎベースや自己流)
■ 承認者にも負担がかかる構造になっている
記入内容にバラつきがあると、承認者側でも次のような対応が発生します。
- 不明点を確認するための差し戻し or 電話・メールでの追加確認
- 記載方法が毎回違うため、正しい情報を読み取るのに時間がかかる
- 「他部署は丁寧に書いているのに、うちはいつも抽象的だ」といった不公平感・疲弊
つまりこれは、申請者だけでなく、承認者にも業務上の負担をかけている構造的な問題なのです。
解決策:入力フォームを整えるだけで、差し戻しは大幅に減らせる
■ 解決の鍵は「記入をルール化し、誰でも正しく書ける状態にすること」
ワークフローシステムには、申請フォームそのものを整備し、記入ミス・記入漏れを未然に防ぐ仕組みがあります。
申請者の記入を支援する機能をうまく活用すれば、「人によって書き方が違う」「何を書けばよいか分からない」といった状態を仕組みで防ぐことができます。
■ フォーム設計で設定できる代表的な機能
機能 | 解決する課題 |
必須項目の設定 | 書き忘れがあっても提出できてしまう問題を防止 |
入力形式の制御(数値・日付・選択式) | 書式ゆれ(5万/¥50,000/50,000円)や自由記述によるバラつきを抑える |
記入例・補足文の表示 | 「どう書けばいいか分からない」をなくす(例:「例:○○社との接待費用」など) |
条件付き表示 | 契約書の有無や対象部署によって、必要な項目を自動で切り替え、混乱を防ぐ |
■ 効果:申請者・承認者の両方の負担が軽減される
入力フォームを整理することで、次のような効果が得られます。
- 誰が書いても必要な情報がそろっており、差し戻しや確認のやり取りが激減する
- 記載方法のばらつきがなくなり、承認者も迷わず判断できる
- 書式に迷わず申請できるようになるため、申請者の心理的負担も軽減
- 業務マニュアルや口頭の指導がなくても、フォームが“自然にルールを教えてくれる”
結果として、申請処理のスピードが上がり、ミスやストレスのない“回る業務”が実現します。
まとめ(課題① 申請書に何を書けばよいのか分からない)
- 記入ルールが人任せだと、差し戻しや確認作業が多発し、業務全体のスピードが落ちる
- ワークフローシステムでは、入力フォームにルールや形式を組み込むことで、誰でも正しく書ける状態を仕組みでつくることができる
よくある質問(課題①|申請内容が分からない)
A:一般的なワークフローシステムでは、記入内容のばらつきを防ぐために、申請フォームを事前に設計するのが一般的です。
「金額は必ず数値で入力する」「“目的”には具体的な行動内容を記入させる」など、書き方をある程度ガイドできるため、自由記述による差異を減らすことができます。
A:紙やExcelではよくあることですが、ワークフローでは補足文を記入欄の近くに自然に表示できるため、“見てもらいやすい設計”が可能です。
たとえば、入力欄の下にグレーで記入例を表示したり、入力中だけヒントを出すなど、読み飛ばされない工夫を設計段階で組み込むことができます。
A:ワークフローでは、申請時点で“必要な情報が揃っているか”を確認する仕組みがよく取り入れられています。
紙では出してからチェックしますが、システムなら出す前に未記入項目や不適切な入力を自動的に警告できるため、差し戻しそのものを減らす運用が可能です。
A:厳しさではなく“判断に必要な情報が揃うこと”を目的に、フォームの設計が工夫されるのが一般的です。
申請者の自由度を完全に奪うのではなく、「粒度を揃える」「書き漏れを防ぐ」ことを重視しており、柔軟な補足欄などで現場の説明も残せる設計が多く採用されています。
A:差し戻し自体は可能ですが、ワークフローシステムでは“出す前に正しく書けるよう導く”設計が推奨されています。
出してから確認するのではなく、入力時点で「漏れ・ミス・不明点」を自動でチェックするため、往復の手間を減らし、申請と承認が一発で通りやすくなります。
課題② どの書式を使えばよいか迷う
背景:なぜ申請書の「選び間違い」が起きるのか?
■ 事例:どの書式を選べばよいか分からず、申請がやり直しに
「この申請、出張費か会議費か迷って、違う書式で出しちゃいました」
「この前は“支払依頼書”だったけど、今回は“精算書”?どっちだったっけ……?」
──こうした迷いや確認は、申請者にとって日常茶飯事です。
複数の書式が存在する企業では、業務内容によってどの申請書を使うべきかが分かりづらくなっていることが多く、ミスが起きるたびに差し戻されたり、再提出を求められたりと、手戻りが業務の足を引っ張る原因になっています。
■ 原因:書式の判断が申請者任せになっている
申請者が書式を間違えるのは、決して不注意だからではありません。
多くの企業で次のような問題が存在しています。
- 書式の命名が分かりにくい(例:「支払依頼書」「費用申請書」「経費精算書」などが混在)
- 用途の違いが明文化されておらず、「違いはなんとなく分かる」程度
- フォーム選択の導線が煩雑で、探すのに手間がかかる(Excelフォルダが階層深い/リンク集が機能していない)
- 担当者ごとの“慣習”が判断基準になっている(=属人化)
結果として、「とりあえずそれっぽいものを出して、間違っていたら戻してもらおう」という文化が生まれ、ミスの前提で処理が回る非効率な状態になりがちです。
解決策:申請者に最適なフォームが選べるように誘導する
■ 解決の方向性:「探させない」「迷わせない」状態をつくる
ワークフローシステムでは、申請内容や選択肢に応じて、申請者が“正しいフォームにたどり着ける”ように導線を整えることが可能です。
つまり、「どれを使えばいいのか分からないから、何となく出す」という状態を、仕組みで未然に防ぐことができます。
最先端の解決策としては「AIが質問・回答形式で、申請者に寄り添ったサポートを行いながら、適切なフォームを入力するように誘導すること」であり、ジュガールワークフローではそのような機能を実装予定です。
AIのサポートがない場合でも、下記のようなサポートが求められます。
■ 具体的な仕組みの例
機能・設計 | 内容 | 解決できること |
申請区分選択によるフォーム分岐 | 「支払」「経費精算」「仮払」などの申請区分を先に選ばせ、該当フォームへ誘導 | 書式の迷いを根本から排除できる |
条件に応じたフォーム切替 | 契約書添付の有無や金額によって入力フォームが自動で変化 | 選択ミス・記入不足を防止できる |
メニュー設計の整理(目的別・業務別) | フォームを“部署別”や“目的別”でグルーピング | 「使う人が探しやすい構造」に整理される |
申請対象の定義ガイド表示 | 「この申請は〇〇のときに使います」など用途の説明を明示 | 「何に使う書式か」が理解できる状態になる |
■ 効果:申請の選び間違いを防ぎ、差し戻しゼロに近づく
こうした設計によって、以下のような効果が期待できます。
- 申請者は迷わず必要な書式を使えるようになり、ストレスが激減
- 選び間違いや二重提出が減り、差し戻しや確認の手間がほぼなくなる
- 「この申請は誰でもこの流れ」という社内標準の処理ルートが定着し、属人化を回避
- 新人や異動者でも、指導なしで正しい申請ができる状態を実現
まとめ(課題② どの書式を使えばよいか迷う)
- 書式の選び間違いは「命名」「導線」「定義の曖昧さ」が重なって生じる構造的な問題
- ワークフローシステムでは、用途や条件に応じてフォームを案内・出し分けする仕組みを設計できる
- その結果、申請ミス・再提出・差し戻しの多発を未然に防げる
よくある質問(課題②|書式の選び間違い)
A:一般的なワークフローシステムでは、申請内容や目的に応じてフォームを選ばせる仕組みをあらかじめ設計することが多く、選び間違いを防ぐ運用が可能です。
たとえば「経費精算」「支払依頼」などの選択肢を先に表示し、選ばれた内容に応じて正しいフォームが自動で開くような仕組みが一般的に採用されています。
A:多くのワークフローシステムでは、共通フォームの中で条件に応じた項目表示・非表示を切り替える設計がよく使われています。
「営業部用」「総務部用」など複数のフォームを作る代わりに、1つのフォームで条件分岐させることで、管理コストを抑えつつ実態に合わせた運用が可能になります。
A:はい、一般的なワークフローでは、申請の出し分けを“人の判断”ではなく“選択式の設計”に置き換えることで、誤選択そのものを防ぐ構成がよく取り入れられています。
これにより、「間違っていたら戻してもらう」前提の運用を卒業し、正しい書式で一度で通る仕組みに変えていくことができます。
A:多くのシステムでは、所属部署や役職ごとに“見えるフォームを制限する”設定が可能です。
申請者にとって関係のないフォームを非表示にすることで、迷いや選択ミスを未然に防ぎ、申請操作をスムーズにできます。
A:一般的なワークフローシステムでは、各申請フォームに用途や注意事項を補足表示する設計がよく行われています。
たとえば、「このフォームは〇〇の申請に使います」といった用途ガイドをあらかじめ表示しておくことで、“聞かないと分からない”状態をなくすことができます。
課題③ 誰に提出すればよいか分からない
背景:申請書の出し先が「人に聞かないと分からない」
■ 事例:出し先の判断が属人化し、手戻りが発生する
「この申請、前回は課長だったけど、今回は部長ですかね?」
「前は総務に出しましたけど、今回は経理……でしたっけ?」
──こうした会話は、申請時に“誰に出せばよいか”が明確に決まっておらず、毎回人に聞いて確認することが当たり前になっている状態を示しています。
さらに厄介なのは、「とりあえず上司に出せばなんとかなるだろう」と思って出した結果、ルートが間違っていて差し戻されるというケースです。
申請者にとっては余計な手間、承認者にとっては制度逸脱──どちらにとっても望ましくない状況です。
■ 原因:社内ルールが“共有されていない or 判断に使えない”
申請の出し先が分からなくなるのは、次のような構造的な要因があるためです。
- 社内規程には「金額10万円以上は部長承認」と書かれていても、申請の場面でそれが見えない・使えない
- 承認者が人名指定で管理されており、異動や不在で毎回設定を変える必要がある
- 組織ごとにルートが異なっており、「前の部署ではこうだった」が通用しない
- 「よく知っている人」に聞いて進める属人運用が慣例化している
結果として、「正しいルートを覚えている人がいないと制度が回らない」という、制度の“形骸化”が発生しているのです。
解決策:条件に応じて承認者を自動で設定する仕組みをつくる
■ 解決の方向性:「誰に出すか」を人が判断せずに済む状態をつくる
ワークフローシステムでは、申請内容に応じて承認者を自動で設定する仕組みをつくることが可能です。
これにより、申請者が「今回は誰に出せばよいか」と迷ったり、毎回人に聞いたりする必要がなくなります。
■ 承認フローの自動設定でできること
設定機能 | 解決できる課題 |
金額・契約有無・所属などによる条件分岐 | 社内規程に基づいて、申請内容に応じたルートを自動で構築できる(例:10万円以上は部長) |
役職ベースの承認設定 | 承認者を「課長」「部長」として設定することで、異動や人事変更があっても対応できる |
代理承認の事前設定 | 上司が不在の場合でも自動的に代理へルートを振り分けられる |
組織単位でのフロー分岐 | 部署や支店ごとにフローを切り替えることで、「うちのやり方」に沿った運用が可能になる |
■ 効果:「誰が出しても、同じフローで処理される」状態を実現
このような仕組みを取り入れることで、次のような効果が得られます。
- 「この申請は誰に出すのか」を申請者が判断しなくてよくなる
- 異動・休暇・組織変更があっても、フローが崩れない運用が可能になる
- 「人によってルートが違う」状態がなくなり、制度としての再現性が担保される
- 「承認者がいないから処理が止まる」などの属人的な障害を回避できる
このように、ワークフローシステムは「申請者が何も知らなくても、ルールに従った流れが自動で回る」状態を実現するための強力な基盤になります。
まとめ(課題③ 誰に提出すればよいか分からない)
- 承認ルートの判断を人任せにしていると、申請ミスや制度逸脱が発生しやすい
- ワークフローシステムでは、条件ごとに承認ルートを自動で構成する仕組みが設計でき、誰が申請しても同じ流れで処理される状態を実現できる
よくある質問(課題③ 誰に提出すればよいか分からない)
A:はい、多くの企業で、承認フローが明文化されていなかったり、担当者によって判断が違ったりする状況が起こっています。特に紙やExcel運用では、「前例を参考に出す」「上司に確認してから出す」ことが常態化し、ミスや差し戻しが頻発する傾向があります。
A:一般的なワークフローシステムでは、承認者を役職単位で設定したり、代理者をあらかじめ定義する仕組みがあります。これにより、人が変わってもルートが崩れず、不在時でも自動で代替ルートに処理が回るよう設計することが可能です。
A:一般的なワークフローシステムでは、金額や申請の種類などの条件に応じて、自動で承認者が決まるようなルート設計が可能です。申請者が「誰に出せばいいか」を判断する必要がなくなるため、ルールの誤解や属人処理を防げます。
A:多くのシステムでは、組織や部署ごとに異なるフローを定義したうえで、自動で切り替える運用が設計可能です。これにより、「営業部ならこの承認ルート」「本社なら別ルート」といった切り分けを、申請者が意識せずに処理できます。
A:ワークフローシステムでは、誰が・いつ・どの内容で承認したかが自動で記録される設計が一般的です。そのため、後から説明責任を果たしたり、監査時に根拠を示すことが容易になります。
課題④ 承認が止まる・放置されてしまう
背景:承認が止まるのは“人の怠慢”ではなく、仕組みの不在
■ 事例:「申請、届いてますか?」と毎回聞かなければならない
「出張精算の承認が3日経っても降りません。届いていないんでしょうか?」
「進捗が見えないので、何度も催促のメールをしています……」
──こうした状況は、申請者にとっても承認者にとっても、ストレスの原因になります。
しかも、これは一部の特殊なケースではなく、紙やExcel・メールベースで承認処理を行っている多くの企業で共通して起きている問題です。
■ 問題は「気づかない」「追えない」状態にある
承認が滞るのは、必ずしも担当者が怠けているわけではありません。
実際には次のような、仕組み不在ゆえの“気づけない構造”が多く見られます。
- 申請が来たことに気づかない(メールが埋もれていた/紙がデスクに置かれていた)
- いまどこで止まっているのかが、申請者にも見えない(Excel回覧では確認できない)
- 催促が申請者任せになっており、対応が後回しになる
- 「誰が対応するべきか」が曖昧になっているケースもある(承認者が不在・役割が不明)
結果として、申請者は「出したあと進まないのが普通」と思い込み、“止まることが当たり前”になってしまっている運用が各所で見られます。
解決策:承認を“進ませる仕組み”を組み込む
■ 解決の方向性:「止まらない」状態を“制度として設計する”
ワークフローシステムの目的は、単に「承認の順番を流すこと」ではありません。
重要なのは、その承認が“前に進むように設計されているかどうか”です。
申請が止まってしまう状況を防ぐため、通知・リマインド・期限の設定といった“処理を進めるための補助機能”を制度として組み込むことが、円滑な運用の鍵となります。
■ ワークフローで設計できる「止まらない仕組み」
機能 | 役割 | 解決する課題 |
自動通知 | 承認依頼を送る | 承認者が申請に気づかない問題を防止 |
リマインド通知 | 一定時間経過後に再通知 | 忘れ・後回しによる滞留を抑制 |
承認期限の設定 | 規程や業務ルールに合わせた処理期限の設定 | いつまでに処理すべきかを明確化し、遅延を許容しない体制をつくる |
進捗ステータスの可視化 | 申請者・管理者がどこで止まっているかを確認できる画面 | 「何日も放置された」申請の発見と対処を容易に |
■ 効果:人まかせではなく、仕組みで“動かす業務”へ
これらの設計によって、次のような効果が期待できます。
- 承認が届いていない/気づいていないといった初期エラーをゼロにできる
- 承認が滞った際に、催促が“自動的に行われる”ため、申請者が気を遣う必要がなくなる
- どこで止まっているかが見えるため、管理者による業務コントロールが可能になる
- 「出せば流れる」状態が制度として担保され、現場に安心感が生まれる
つまり、承認フローとは「通す流れ」ではなく、「進ませる構造」をつくることが制度設計として求められているのです。
まとめ(承認が止まる・放置されてしまう)
- 承認が止まる原因の多くは、“気づけない構造”にあります
- ワークフローシステムでは、通知・リマインド・期限・可視化といった“進行補助”の仕組みを制度化できる
- その結果、申請の流れは“人の努力”から“仕組みで動く業務”へと変わります
よくある質問(承認が止まる・放置されてしまう)
A:確かに判断の遅れはありますが、実際には“気づけない仕組み”が原因になっていることが多いです。
紙やメールでは通知が埋もれたり、忘れてしまったりしやすく、それを補助する仕組みがないのが本質的な課題です。
A:仕組みだけでは万能ではありませんが、通知・期限・可視化によって“放置されづらい状態”をつくることができます。人の注意力や気分に頼るより、仕組みとして気づかせ、促す構造にすることで滞留の発生確率を大幅に減らせます。
A:一般的なワークフローシステムでは、メール以外にもチャット通知やスマホ通知など、複数の方法を組み合わせる設計が多く採用されています。通知そのものの設計次第で、埋もれにくく、処理漏れも防げます。
A:催促が自動化されることで、申請者が“催促役”にならずに済むというメリットがあります。
人に言われるよりも、システムからのリマインドの方が角が立たず、制度として受け入れられやすい傾向があります。
A:申請者・承認者・管理者それぞれに、適切なステータスが可視化されるのが一般的です。
特に管理者は、滞留状況をまとめて把握できるため、業務全体の流れを把握・改善するうえでも効果的です。
課題⑤ 文書が必要な人に共有されない
背景:関係者に“伝わっていない”ことが原因で起きる手戻り
■ 事例:「聞いてない」「見ていない」で再対応が発生する
「稟議は承認されたはずなのに、現場では処理が止まっていた」
「書類をメールで送ったつもりだったけど、経理には共有されていなかった」
「担当者の不在中に申請が進んでしまっていて、結局やり直しに……」
こうした “伝わっていない”が原因の二重処理・手戻り・トラブルは、紙やExcel、メールによる運用において非常に起きやすい問題です。
■ 原因:「共有する・しない」が人の判断に任されている
文書共有の課題は、「誰がいつ・誰に情報を届けるか」が明確なルールではなく、“慣例”や“気配り”に委ねられていることにあります。
- 承認後の書類が、申請者や担当者のローカルPCにだけ保存されている
- ファイル共有やメール転送が、個人の判断に依存している
- そもそも「誰に知らせるべきか」が明文化されていない
- 関係者の異動・欠席によって、共有ルートが毎回あいまいになる
このように、情報が必要な人に届くかどうかが“運任せ”になっていることで、業務上の齟齬や誤解、処理遅延が発生します。
■ 共有できても「どこにあるか分からない」「見ていない」の壁
- ファイルは共有されたが、メールに埋もれて見逃された
- 保管先が複数存在していて、どこを見れば最新か分からない
- 「共有されていたけれど、誰が見たのかが分からない」
このような状態では、「共有したかどうか」だけでなく、「本当に見られたのか」「誰が見たのか」までを担保できないのが最大の課題です。
特に複数部門にまたがる処理や監査対応の場面では、こうした曖昧さが大きな問題となります。
解決策:関係者が「いつでも確認できる状態」を仕組みで整える
■ 解決の方向性:「誰が共有するか」ではなく、「権限がある人が確認できる」状態を設計する
紙やExcelでは、「共有されたかどうか」「見たかどうか」が人に任されているため、ミスや行き違いが起こりやすくなります。
ワークフローシステムでは、文書を自動的に共通の場所に集約し、権限を持つ人がいつでも参照できるように設計することで、こうした問題を仕組みで回避することができます。
加えて、アクセスログ(誰が、いつ、どの文書を見たか)も記録に残るため、後からの確認や監査にも対応できます。
■ ワークフローシステムで共有ミスをなくすための設計例
機能 | 解決する課題 |
承認済み文書の自動一覧化 | 「誰が・いつ・どんな文書を出したか」が一元化され、関係者全員が確認できる状態に |
キーワード検索・フィルター機能 | 必要な文書をすぐに探し出せるため、「どこにあるか分からない」状態を防止 |
部署・役職ごとのアクセス制限 | 関係者以外は見られないよう制御しつつ、必要な人はいつでも確認できる状態を保つ |
参照通知・履歴表示 | 誰がどの文書を見たかが記録され、「見た/見ていない」のトラブルを防止 |
■ 効果:「伝わっていない」は制度上、起こらなくなる
このような共有設計により、次のような業務改善が見込まれます。
- 書類がどこにあるかを探す時間・手間が削減される
- 社内関係者の間で、「聞いていない」「見ていない」が起こらなくなる
- 誰が参照したかの履歴が残り、「本当に見たかどうか」まで後から確認できる
- 「届けるべき人に情報が届いたか?」を、システムが自動で担保する状態になる
つまり、共有の成否を人の気配りや行動に任せず、「共有されていることが前提の業務設計」に変えることができます。
まとめ(文書が必要な人に共有されない)
- 文書共有がされない根本原因は、「誰が共有するか」が人に任されていることにある
- ワークフローシステムでは、共有・参照を人に委ねず、“いつでもアクセスできる権限管理+履歴記録”によって仕組み化できる
- 結果として、「伝わっていない」という状態が業務上起こらなくなり、トラブルも未然に防止される
よくある質問(文書が必要な人に共有されない)
A:はい。ワークフローシステムでは、承認済みの文書が一覧表示されるため、“見落とし”や“メールが届いていない”というトラブルを避けられます。探しに行かなくても、“見ればある”状態を制度として整備できます。
A:多くのワークフローシステムでは、部署・役職・申請種別などに応じて閲覧権限を細かく制御できます。見せるべき人だけが見られる状態をつくりながら、情報漏えいも防げます。
A:閲覧履歴や通知履歴が自動的に残るため、誰が見たか/見ていないかを後から確認できます。
監査・説明責任の観点でも安心できる設計です。
A:ワークフローでは、承認済みの正式な文書を自動的に「正本」として管理し、バージョン混在を防ぐ設計が一般的です。下書きや差し戻し文書との区別も明確にされます。
A:アクセスログが残る設計であれば、“誰が・いつ”見たかが証拠として記録されるため、見た/見ていないを明確にできます。これにより、曖昧な責任の押しつけ合いも防げます。
課題⑥ 文書の保存が大変で、コストもかかる
背景:保存は「重要だけど面倒」で、コストも積もりやすい
■ 事例:保存の手間と負担が積み重なっていく現場
「紙のファイルが棚を埋め尽くしていて、保存場所が足りない」
「いつまで保存すればいいのか分からず、とりあえず全部残している」
「保存先のルールが部署ごとに違っていて、検索も統一されていない」
「“あとで捨てる”つもりが、誰も捨てないまま何年も放置されている」
──こうした声は、管理部門や情報システム部門だけでなく、実際に申請処理に関わる各部署の申請者・承認者にも共通する悩みです。
■ 原因①:保存要件は“あるが守られていない”
多くの企業では、文書の保存期間や廃棄基準は社内規程で定められています。
しかし、実務の中では次のような問題がよく起きています。
- 「何年保存するか」はルールで決まっていても、現場では意識されていない
- PDF・Excel・紙が混在しており、統一された保存先が存在しない
- どこに保存したかを覚えているのが担当者本人だけ(属人管理)
- 保存期間が過ぎても、誰も廃棄処理をせず、放置されるまま肥大化する
このように、保存は「制度として重要」である一方で、「現場としては最も後回しにされがち」な業務のひとつになっているのが実情です。
■ 原因②:保存の手間や誤操作が、コストやリスクになる
保存ができていたとしても、それが手作業・属人対応である場合、次のような問題がコストに直結します。
- 文書整理や命名、分類にかかる作業時間・人件費
- 保存容量が肥大化し、ファイルサーバやクラウドの使用量が増大
- 保存先の重複・誤消去・名称ゆれなどによる検索工数の増加
- 廃棄ミスや誤削除によるトラブル(「本当は残すべきだった書類を消してしまった」)
結果として、「保存しないといけないけど、したくない」「どんどん溜まる一方で誰も触れない」という状態が、コスト面・業務面の両方で大きな負担となります。
解決策:保存期間の自動管理と廃棄の制度化で、負担なくルールを守る
■ 解決の方向性:保存の「いつまで・どこに・どう扱うか」を仕組みに任せる
保存業務の負担は、「人が考えて」「人が動く」ことに起因します。
ワークフローシステムでは、文書の保存管理を制度に基づいて自動化・一元化することで、「保存が面倒」「いつ捨てていいか分からない」「どこにあるか忘れる」といった現場の悩みを解消することが可能です。
■ 一般的なワークフローで設計される保存・廃棄の仕組み例
機能 | 解決する課題 |
保存期間の自動設定 | 社内規程に基づいて、申請種別や文書の性質ごとに保存年限(例:7年)を自動適用。保存忘れ・過剰保存を防ぐ |
保存フォルダの一元化・権限管理 | 保存先が分散せず、文書が正しく格納され、アクセス権限により誤操作や情報漏えいを防止 |
廃棄申請・承認フローの自動化 | 保存年限到達後、削除の可否を確認するプロセスを仕組みとして組み込むことで、勝手な削除や無責任な放置を防げる |
アクセスログ・改ざん防止 | 保存された文書へのアクセス・操作履歴が残ることで、監査対応や説明責任にも対応できる状態を担保 |
■ 効果:「保存ルールを守りつつ、手間もコストも抑える」
このような仕組みを活用することで、次のような業務改善が見込まれます。
- 書類の保存・廃棄に関するルール遵守が“自動的に”行われる
- ファイル整理や検索にかかる時間が大幅に削減される
- サーバ容量やクラウドストレージの肥大化を防げるため、保管コストが抑えられる
- 廃棄ルールを無視した削除や、消し忘れによる情報リスクを未然に防げる
- 「誰が何を保存し、いつまで残すのか」が組織として明確になることで、監査・法令対応にも強くなる
まとめ(文書の保存が大変で、コストもかかる)
- 文書保存が煩雑になる最大の原因は、“人の判断”で期限や保存先を決めている点にあります
- ワークフローシステムを活用すれば、保存期間の自動設定・権限付き保管・廃棄フローの自動化により、ルール遵守とコスト削減を両立できます
- 「保存しなければ」から「保存されている」状態へ──保存を仕組みに任せる時代です
よくある質問(文書の保存が大変で、コストもかかる)
A:はい。多くのワークフローシステムでは、申請種別や文書の種別ごとに「保存年限」を自動的に設定する仕組みが一般的に採用されています。
これにより、いつまで残すべきかを手動で判断する必要がなくなります。
A:保存場所を申請フロー内で一元化しておくことで、「どこにあるのか」を探す必要がなくなります。
役職や部署に応じてアクセス権限を設定することで、必要な人だけが見られる構造になります。
A:そもそも“人が考えて保存する”運用をやめるのが一番の省力化です。
制度に沿った保存年限の設定・自動分類・保管・廃棄までをシステムに任せることで、負担そのものが発生しにくくなります。
A:廃棄処理に承認フローを組み込むことで、“誰かが勝手に削除する”運用を制度的に防げます。
さらに、削除・廃棄の履歴が残るため、後からの確認や監査にも対応可能です。
A:不要文書が放置されていることが多くのコスト要因です。
保存期間を過ぎた文書を自動的に通知・廃棄できる設計にしておくことで、ストレージを最適化し、保管コストを抑える運用が実現できます。
まとめ|“止まらない・迷わない・見える”文書業務へ
~制度を「守る」のではなく、制度が「支える」仕組みをつくる~
7つの課題と、ワークフローシステムでの解決アプローチ
課題 | 主な困りごと | 解決の方向性 |
① 記入がバラバラ | 人によって書き方が違い、差し戻しが発生 | 入力フォームで必須項目・形式・記入例を設計 |
② 書式が選べない | どの申請書を使うか迷う/間違える | フォーム選択の誘導・条件分岐で正しい書式へ誘導 |
③ 提出先が分からない | 「誰に出すべきか」を毎回人に確認している | 申請条件に応じた承認ルートの自動構成 |
④ 承認が止まる | 気づかれない・催促しなければ動かない | 通知・リマインド・期限設定で“進ませる”仕組みを構築 |
⑤ 共有されない | 必要な人に届かない/どこにあるか分からない | 権限に応じた自動共有・一覧・アクセスログで可視化・レポート |
⑥ 保存が大変/コスト増 | 手動管理・保存ルール未徹底・容量増加 | 保存年限の自動設定・廃棄フローの制度化で対応 |
ワークフローは、現場の「困った」を制度で支えるインフラ
本記事で扱った課題はいずれも、「制度がない」わけではありません。
むしろ、「制度はあるのに、実務で使えない・守れない・伝わらない」ことで、現場が疲弊しているのが本質です。
ワークフローシステムは、そうした制度を現場で“無理なく回せる仕組み”に変えるための道具です。
誰かの記憶や気配りに頼るのではなく、制度そのものが自動的に機能するように支える“実務の基盤”として、今後ますますその重要性は高まるはずです。