業務改善につながる“アプリ化すべき業務”の見つけ方とは?

この記事のポイント

  • 非効率な業務は「紙」「Excel」「確認の繰り返し」「属人化」がサイン
  • As-Isプロセスマップによる見える化で、ボトルネックをチーム全体で共有
  • 「影響度×実現容易性マトリクス」で改善優先順位を決める思考法を解説 

文書管理を含む日々の業務の中には、知らず知らずのうちに生産性を下げている「非効率」が数多く潜んでいます。この記事では、そのような非効率の原因を見つけ出し、具体的に改善していくためのフレームワークをご紹介します。「何とかしたいけど、どこから手をつければいいかわからない」といった漠然とした悩みを、チーム全体で共有できる明確な行動計画へと変えていく。そのための考え方と進め方を、順を追ってわかりやすく解説します。

なぜ今、現場の「非効率の見える化」が問われるのか

働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、業務の効率化は多くの企業にとって避けて通れないテーマです。その実現を担うのは、実際の現場で業務を深く理解している従業員──いわゆる「シチズン・ディベロッパー(市民開発者)」の存在です。

彼らが改善の主役として力を発揮するためには、まず「どこにどんな非効率があるのか?」を可視化する必要があります。「なんとなく大変」「やりづらい」といった主観的な感覚を、チームで共通認識できる課題として整理すること。それが、具体的な改善の第一歩です。

非効率の放置は、ただの時間やコストのムダにとどまりません。
例えば──

  • モチベーションの低下や人間関係の悪化を引き起こす「心理的コスト」
  • データを活かせず、意思決定の質を下げる「戦略的コスト」

これらは、目に見えづらいながらも、確実に組織の力を奪っていく“隠れた損失”です。

Q.「シチズン・ディベロッパー」とはどんな人ですか?

A. IT部門ではなく、日々の業務を行う現場の従業員の中で、自分たちの仕事をより良くするためにツールを使ってアプリなどを作成・活用する人のことを指します。業務を深く理解しているからこそ、実用的で効果的な仕組みを素早く作れる可能性があると期待されています。

ステップ1:診断―業務改善すべき領域を見極める4つの着眼点

業務改善は、やみくもに進めてもうまくいきません。最初に必要なのは、「どの業務が改善対象なのか」を見極める“診断”のプロセスです。特に、紙でのやり取りやExcelでの管理、何度も繰り返される確認作業などは表面化しにくいものの、生産性を大きく損なっている可能性があります。ここでは、そうした業務を見つけるための4つの着眼点について、具体的に解説します。

≫現場主導の業務改革を、最小の負担で最大の成果に ジュガールの業務アプリ作成ツールで、非効率な日常を仕組みで変える

着眼点①紙の書類―その運用、本当に必要ですか?

日報、申請書、点検記録などをいまだに紙で運用している現場は少なくありません。
しかし、その“慣れたやり方”が、実は多くの非効率を引き起こしている可能性があります。

  • 転記ミス・読みにくさ:手書きはミスが発生しやすく、情報の正確性に不安が残ります
  • 承認の停滞:紙の回覧は承認者の不在などで止まりやすく、進捗が見えづらくなります
  • 情報が活かせない:紙に書かれた情報は検索できず、過去のナレッジとしても使いにくい
  • 紛失・持ち出しリスク:物理的に存在するがゆえのセキュリティリスクも見逃せません

このような問題が起きている業務は、アプリ化によって大幅な改善が期待できる領域です。

着眼点②確認・催促の繰り返し―無駄な連絡、増えていませんか?

申請の進捗確認や承認の催促など、定型的なやり取りが何度も繰り返されている場合、それは「見えないムダ」が蓄積されているサインです。

◎こんな状態になっていませんか?

  • 「あの書類、今どこまで進んでますか?」と電話やチャットで何度も確認
  • 承認が止まっていても、誰も気づかず作業が進まない
  • 催促される側もストレスを感じ、職場の空気が悪くなることも…

こうしたやり取りは付加価値を生まない「低生産性作業」です。
本来集中すべき業務に時間が使えない原因になっているかもしれません。

着眼点③「あの人にしかできない」業務―属人化のサインです

「これは〇〇さんしかできない」「あの人がいないと、処理が止まってしまう」
そんな状態になっている業務は、属人化が進んでいる可能性があります。

◎属人化によって生じる2つの大きなリスク

  • オペレーショナルリスク:担当者の急な不在で、業務が完全にストップ
  • ナレッジの空洞化:蓄積された知識が個人に閉じてしまい、他のメンバーに継承されない

情報や作業手順が「頭の中」や「個人PC」に閉じていると、組織全体の成長や継続的な改善が難しくなります。逆に言えば、このような業務を仕組み化・アプリ化することで、大きな効果を生むことができます。

着眼点④ Excelの沼にハマっていませんか?

多くの企業で重宝されるExcelですが、その手軽さゆえに本来の用途を超えて複雑な業務管理に用いられるケースが散見されます。その結果、「Excel地獄」とも表現される構造的な非効率とリスクを生み出していないでしょうか。

申請業務におけるExcel管理の課題を象徴したイラスト。書類の山や混乱した作業風景が描かれ、「Excel業務の限界」を視覚的に訴えている。

◎よくある問題点

  • ファイル名が混沌とする:「営業週報_最新_v3_再再修正(最終).xlsx」など、どれが本物か不明
  • 共同作業の壁:基本的に同時編集できず、共有にはタイムラグが発生
  • データの壊れやすさ:複雑な関数・マクロに頼った構造は、ちょっとした操作で崩壊することも
  • データの属人化とサイロ化:ファイルが個人PCに点在し、異動や退職でブラックボックス化してしまう

「Excelを使いこなしているつもりが、実は非効率を生んでいた」
そんなケースが非常に多く見られます。データが活かされないまま終わっているなら、思い切ってアプリ化を検討すべきタイミングかもしれません。・退職すると誰もメンテナンスできなくなる「ブラックボックス化」は多くの組織が直面する課題です。

Q. うちの業務、複数の項目に当てはまっています。どこから始めればいいですか?

A. 一度にすべてを解決しようとする必要はありません。最も改善効果が大きく、関係者が少ない“始めやすい業務”から始めてみてください。小さな成功体験が、次の改善へつながる足がかりになります。次のステップで紹介するフレームワークを参考に、優先順位のつけ方も確認してみましょう。

ステップ2:可視化―チームで描く「業務の地図(As-IsプロセスMAP)」

改善すべき業務の兆候を見つけたら、次は「どこで、何が起きているのか」をチームで共有するための“見える化”のステップに進みます。この工程では、いきなり解決策を考えるのではなく、まずは現状を客観的に整理することが目的です。

重要なのは、美しいフローチャートを作ることではありません。日々の業務を最も理解している現場のメンバー自身が、業務の流れを一つひとつ洗い出し、「負担」や「ムダ」「止まりやすいポイント(ボトルネック)」に気づくことです。そして、その気づきをチーム全体で共有することで、組織として改善の一歩を踏み出せる状態をつくるのです。

ここでは、ITの専門知識がなくても、誰でもファシリテーターとなって進められる「As-IsプロセスMAP」のつくり方をご紹介します。

成功の8割は「準備」と「場の設計」で決まる

良いワークショップに必要なのは、「資料」や「会議室」だけではありません。参加者が本音を出しやすく、協力し合える“心理的に安心な場”をつくることが、成果のカギを握ります。

準備のポイント

  • テーマは絞る:「営業プロセス全体」では漠然としすぎます。たとえば「週報の作成〜提出」など、具体的でイメージしやすい範囲に限定しましょう。範囲が明確であれば、議論も深まりやすく、改善目標も立てやすくなります。
  • 関係者を選ぶ:業務を実際に行っている担当者の参加が不可欠です。上司やリーダーだけでなく、実務を知る人の視点が、リアルな改善ポイントの発見に直結します。
  • 心理的安全性をつくる:最初に「ルールづくり」を行うことで、安心して発言できる雰囲気を作ります。ちょっとした一言で、議論の質が大きく変わります。

ワークショップで共有するルールのアイデア

①「人」ではなく「プロセス」に注目する
 ✕「○○さんのやり方が悪い」
 ◯「この作業の流れに、ミスが起きやすいポイントがあるかもしれない」

②すべての意見を歓迎する
 「ちょっと面倒」「やりにくい」などの小さな違和感こそ、改善のヒントです。否定せず、「なるほど、そう感じてたんですね」と受け止める姿勢が重要です。

③発言は最後まで聴く
 途中で遮らず、まずは相手の話を聴く。シンプルですが、信頼関係を築くうえで非常に大切なポイントです。

④ポジティブなスタートを意識する
 冒頭にファシリテーターが「今日はみんなで改善のヒントを探す作戦会議です」と宣言するだけで、場の雰囲気はずいぶん変わります。

ファシリテーターが導く可視化の具体的ステップ

ファシリテーターによる業務可視化のステップを図解したイラスト。手書き風のフローチャートで、課題整理から施策立案までの流れを段階的に示している。

ファシリテーターの役目は「答えを出すこと」ではなく、参加者の頭の中にある現場のリアルを引き出すことです。以下のステップで進めてみましょう。

  1. 一連のタスクを洗い出す

     「次にやる作業は?」「その情報は誰に渡しますか?」といった問いを重ねながら、各タスクを付箋やカードに書き出し、時系列に並べていきます。

  2. 業務のスタートとゴールを定める

    「この仕事は、何をきっかけに始まりますか?」「どこまで終わったら“完了”と言えますか?」という問いかけで、全体の流れを明確にします。

  3. “感情のデータ”を追加する

    各タスクについて、「面倒に感じる点は?」「よくミスが起きる箇所は?」「この作業、本当に必要?」などの問いを投げかけ、担当者の“本音”を別の色の付箋で貼っていきます。ここにこそ、改善のヒントが詰まっています。

  4. ボトルネックを明らかにする

    「待ち時間が発生する」「確認のやり取りが多い」「情報が止まりがち」といったポイントは、業務の流れを滞らせる“詰まり”のサインです。重点的にマークして共有しましょう。

As-IsプロセスMAP」の価値とは?

完成した「As-IsプロセスMAP」は、単なる業務フロー図ではありません。現場の知恵や苦労が可視化された改善の宝の地図です。普段は自分の作業しか見えていなかった担当者も、他メンバーの工程との関係や、全体に与える影響を初めて実感することができます。

「私の報告が1日遅れると、後工程でこんなに待ち時間が発生していたんだ」
「念のためやっていた確認作業が、全体の流れを止めていたかもしれない」

こうした気づきは、業務を「自分ごと」として捉える当事者意識を生み、個人の不満を「チームで解決すべき課題」へと変換します。この共通認識こそが、改善の強力な原動力になります。

Q. まとまった時間をとるのが難しい場合はどうすべきですか?

A. 長時間の会議が難しい職場でも、大丈夫です。大切なのは“完璧なフロー図”ではなく、“改善への対話を始めること”です。例えば、「まずは30分、この1つの作業だけを話してみよう」と小さく始めてみてください。1回30分の対話でも、数回積み重ねるうちに、全体像が見えてくるはずです。業務改善は“一歩目”を踏み出すことに、最も大きな価値があります。

ステップ3:優先順位付け―「影響度×実現容易性マトリクス」で論理的に次の一手を決める

ワークショップで業務の課題が「見える化」された後、次に立ちはだかるのが、「どこから手をつけるか?」という悩みです。改善したいポイントがいくつもあると、すべて一気に解決しようとして混乱してしまいがちです。しかし、それではかえって非効率です。そこで活用したいのが、課題を“論理的に”整理し、取り組むべき優先順位を明確にするためのフレームワーク――「影響度 × 実現容易性マトリクス」です。

「影響度」と「実現容易性」の2軸で業務改善施策を分類したマトリクス図。縦軸が「影響度(大〜小)」、横軸が「実現容易性(低〜高)」を示し、優先すべき施策を視覚的に整理している。

「影響の大きさ」と「実現のしやすさ」で課題を仕分ける

このマトリクスは、洗い出した課題を2つの軸で評価し、次のアクションを判断するためのシンプルな思考ツールです。

Y軸:ビジネスインパクト(=影響度)→「この課題を解決すると、どれだけの価値があるか?」

効果は数値化できるものに限らず、心理的な影響も含めて広く捉えます。

  • 時間的効果:作業時間の短縮、確認作業の削減など
  • 金銭的効果:印刷・郵送コスト削減、残業代の抑制など
  • 品質的効果:ミスの減少、報告の精度・スピードの向上
  • 心理的効果:業務ストレスの軽減、催促の気まずさの解消 など

X軸:実現容易性→「この課題は、現場で無理なく解決できるか?」

解決のしやすさを評価する際は、以下の観点を考慮します。

  • 技術的ハードル:ノーコードツールなどを活用すれば、専門知識なしでも実行可能か?
  • 関係者の多さ:関わるメンバーが多く複雑でないか?自部署だけで完結できるか?
  • 所要時間:準備から改善実行まで、どの程度の期間が必要か?
  • 既存ルールへの影響:現行業務フローを大きく変えずに済むか?

◎実際の進め方:付箋を使ってチームで配置してみよう

ワークショップで洗い出した課題の付箋を、一つひとつマトリクスに貼っていきます。このとき「正解」を求めるのではなく、チームで対話しながら感覚的に位置を決めていくことが大切です。

たとえば──
「これはBよりも影響が大きいから、もう少し上に」
「Cよりも実現は簡単そうだから、少し右に寄せよう」

こうした議論そのものが、チームの視点を揃え、共通認識を深める大事なプロセスです。

4つの象限が示す「次にとるべきアクション」とは?

配置した課題がマトリクスのどの位置にあるかで、次のアクションが明確になります。

実現容易性:低実現容易性:高
ビジネスインパクト:高第2象限:主要プロジェクト
戦略的に重要だが、計画的なアプローチが必要
第1象限:クイックウィン
最優先で着手すべき課題
ビジネスインパクト:低第4象限:費用対効果の低い課題
積極的に避けるべき課題
第3象限:後回し
リソースに余裕がある場合のみ検討

なぜ「クイックウィン」から始めることが有効なのか?

第1象限の「クイックウィン(Quick Wins)」とは、小さな労力で大きな効果が得られる課題のことです。このような課題から着手すると──

  • 短期間で成果を実感できる
  • 現場の成功体験が得られる
  • 改善に対するチームのモチベーションが高まる
  • 経営層や他部署への説得材料になる

つまり、クイックウィンの成功は、その後の大きな改善活動への“土台づくり”になります。「私たちのチームでも、こんなに改善できた」という事例が社内に広がれば、協力体制も自然と整っていきます。

Q. チーム内で意見が割れたらどうするべき?

A. 評価に対する意見の違いは、現場担当者と管理職で視点が異なるからこそ生まれるものです。
現場 → 「この業務は自分で改善できそう」
管理職 → 「これを改善すれば全体への影響が大きい」
このような違いを丁寧にすり合わせていくことで、全員が納得できる判断ができます。
完璧な位置決めを目指す必要はありません。重要なのは、対話を通じて共通の優先順位を築くことです。

「入力の効率化」だけで終わらせない―真の業務改善に必要な視点とは

業務の課題を特定し、優先順位をつけ、いよいよ改善策を検討する段階になったとき、そこで立ち止まって考えたい本質的な問いがあります。

「業務のデジタル化とは、入力をラクにすることがゴールなのか?」

多くのツールは「入力の効率化」を強調しますが、それはあくまでスタートラインに過ぎません。現場の負担を本当に減らし、組織全体を良くしていくにはその先の“活用”まで見据える視点が必要です。

なぜ「入力アプリ」だけでは、課題は解決しきれないのか?

たとえば、これまで紙やExcelで行っていた報告業務をスマートフォンアプリに置き換えたとしましょう。入力作業は確かに簡単になります。しかし、以下のような“見えない問題”が残っていれば、根本的な解決とは言えません。

①ボトルネックの場所が変わっただけ

入力されたデータがメールで添付され、承認者が手作業で確認──
これでは、単に“紙のムダ”が“デジタルの滞留”に変わっただけです。

②データが活用されない「情報の死蔵」

せっかく収集したデータが、クラウド上に溜まるだけで誰も見返さない、分析しない…。
これでは“デジタル”であっても、“価値ある情報”にはなりません。

③現場に残る心理的な負担

「承認されたか不安…」「また催促しないといけない…」
こうした確認の手間や不透明さは、入力を簡単にするだけでは解消されません。

≫アプリ化の“その先”まで考え抜いた設計 ジュガールの業務アプリ作成ツールで、情報を活かせるしくみをつくる

本当に目指すべきは、「負担の最小化 × 状況の可視化」

業務改善を成功させるカギは、入力をラクにするだけではなく、その情報が誰にとっても“役立つ”形で使われることです。そのために必要な視点が、次の2つです。

「負担の最小化 × 状況の可視化」という2つのキーワードを中心に、業務効率化の要点を整理した図解。左側のオレンジ枠では「日時・場所情報の自動記録」「音声メモの保存」「片手操作可能」など、現場の負担を軽減する工夫を紹介。右側の水色枠では「誰が、いつ、どこで作業したか」や「止まっている作業の把握」「再発リスクの分析」など、業務の見える化のメリットを列挙。スマートフォンやグラフのアイコンが視覚的に補足している。

①現場の「負担の最小化」

“キーボードを打たない”ことが目的ではありません。
現場の作業フローの中に、自然に報告や記録が組み込まれることが理想です。

たとえば…

  • スマホで撮影した写真に、自動で日時・場所情報が記録される
  • 作業中の音声メモが、そのまま報告データとして残る
  • 現場にいながら片手で操作できる、直感的な入力画面

こうした「意識せず情報が集まる設計」によって、現場は“報告書を書く”という感覚から解放されます。結果として、リアルタイムかつ正確な情報が、自然と集まるようになります

②管理者・経営側の「状況の可視化」

現場から集まったデータは、すぐに承認フローを自動で流れ、関係者へ共有されるべきです。

  • 誰が、いつ、どの作業を承認したか
  • どこで止まっているか
  • どの案件に対応が必要か

これらを一目で把握できる状態=“見える化”された業務です。

さらに蓄積されたデータをBIツールなどで自動的に可視化すれば──

  • 過去の傾向や改善ポイント
  • 成功要因や再発リスク
  • チームの負荷や偏り

といった分析も、現場の勘や手間に頼らずに可能になります。

この「負担の最小化」と「状況の可視化」は、切り離せない関係です。

  • 負担が少ないから、正しい情報が集まる
  • 情報が活用されるから、現場は改善の手応えを感じる

この好循環が回り出すことで、現場と管理部門の間に情報が生きる仕組みが生まれます。そして、現場は自分の仕事の価値を実感し、さらなる改善の意欲が育つのです。単なる入力作業の簡略化ではなく、情報を“活かす”仕組みづくりへ。それこそが、真の業務改善につながる「入力効率化の、その先」にある本質です。

実践シナリオ:「Excel地獄」からの脱却をイメージする

≫小さな週報改善が、職場全体の進化につながる ジュガールの業務アプリ作成ツールで、Excel依存からの脱却を実現する

――業務がどう変わるのかをリアルに想像してみましょう

業務改善のフレームワークを理解しても、実際に自分たちの職場がどう変わるのかはなかなかピンとこないものです。そこで有効なのが、「As-Is(現状)」「To-Be(理想の姿)」を比較してみることです。改善によって得られる変化をイメージできれば、関係者の共感も得やすくなります。

今回は、多くの現場が直面している「Excelによる営業報告」の課題を題材に、アプリ化によって業務がどのように変化するのかを見ていきましょう。

「As-Is(現状)」と「To-Be(理想の姿)」を比較し、業務改善の効果を示す図解。左側には、紙の山に囲まれた疲れたビジネスパーソンのイラストとともに「時間がかかる」「ミスが多い」など現状の課題が列挙されている。中央には「雇用創出」「リアルタイム化」「精度の向上」「モチベーションの向上」といった改善効果が強調され、右側には会議中の明るい表情のビジネスパーソンのイラストとともに理想の状態が描かれている。

As-Is(現状):コピー&ペーストに追われる月曜の朝

現在の業務フローでは、営業担当者それぞれが個別にExcelで週報を作成し、マネージャーにメールで送信しています。マネージャーはそのファイルをひとつずつ開いて、手作業で必要な数値をコピー&ペーストしながら、マスターシートに集計を行います。週次会議で使うグラフも、自らExcelで作成しなければなりません。

この作業には毎週、ほぼ半日分の時間がかかるうえ、手動での作業が中心なためミスも起きがちです。
「数字が合わない」「ファイルが届いていない」「最新版がどれかわからない」といった小さな混乱が積み重なり、報告内容も常に数日遅れのものになりがちです。

それに加えて、催促や確認のやりとりが続き、マネージャーも営業担当も、不要なストレスを抱えています。

To-Be(理想の姿):リアルタイムの情報で、未来の戦略を語る

改善後の理想的な運用では、営業担当者はスマートフォンのアプリを使って、日々の活動をその場で簡単に記録するようになります。訪問内容や商談の進捗を入力すれば、情報は自動でクラウド上のデータベースに蓄積され、誰かに送る必要も、手作業でまとめる必要もありません。

マネージャーは、ダッシュボードを開くだけでチーム全体の営業活動をリアルタイムに把握できます。毎週の会議では、数字の確認やミスの修正ではなく、今後の戦略や打ち手について、前向きな議論に集中できるようになります。

これにより、報告作業にかかっていた時間はほぼゼロに。24〜48時間の遅延があったデータも、リアルタイムで共有され、精度も飛躍的に向上します。何より、反復作業から解放されたマネージャーや担当者が、本来取り組むべき付加価値の高い仕事に時間を割けるようになるのです。

KPI項目As-Is(現状)To-Be(理想の姿)改善効果
プロセスに費やす時間週8時間(マネージャー)ほぼゼロ(自動集計)週8時間の創出
データの遅延24時間〜48時間リアルタイムリアルタイム化
データの正確性低(コピー&ペーストミス多発)高(ヒューマンエラーの排除)精度の向上
従業員のストレス高(反復作業、ミスの修正)低(付加価値の高い業務に集中)満足度とモチベーションの向上

変化のインパクトを数字で比較してみると…

こうした業務の変化は、定性的な満足感だけでなく、定量的にも明確な効果をもたらします。たとえば、毎週8時間かかっていた報告業務がゼロになることで、年間にすると400時間近い時間を創出できます。手作業によるミスも大幅に減り、確認や修正の手間もなくなります。報告がスムーズに進むことで、チーム全体のストレスも軽減され、働きやすい職場づくりにもつながります。

想像できれば、行動に移しやすくなる

「Excelの作業に疲れている」「集計に追われて戦略を考える余裕がない」
そんな状況に心当たりがあるなら、この変化は決して夢物語ではありません。

最初から大規模に始める必要はありません。まずは週報ひとつだけでも、アプリ化の可能性を試してみる。その“小さな成功体験”が、職場全体の業務改善の大きな流れを生み出していきます。

現状をそのままにしておくのではなく、「こう変わったら、きっと楽になる」という未来の姿をチームで共有すること。それが、業務改善を進めるうえで、何よりも大切な第一歩になります。

【FAQ】現場の業務改善に関するよくある質問

Q1. ITに詳しい人がいない部署でも、業務の見える化は本当にできるのでしょうか?

A. はい、大丈夫です。
本記事でご紹介したワークショップの進め方は、専門的なIT知識がなくても実施できるように設計されています。大切なのは「技術力」ではなく、「現状を正しく理解しようとする姿勢」です。業務をいちばん理解しているのは、現場で日々作業を行っている皆さん自身。だからこそ、担当者が主導することで、より実態に即した改善が進められるのです。

Q2. アプリ化したい業務がたくさんあります。どこから手をつければいいかわかりません。

A. 「影響度 × 実現容易性マトリクス」を使ってみてください。
すべての業務を一度に変えるのは現実的ではありません。まずは、「改善による効果が大きく、かつ取り組みやすい」業務からスタートするのが効果的です。いわゆる“クイックウィン”に該当する業務に絞って、小さな成功を積み重ねていくことで、徐々に職場全体に波及していくような流れが生まれます。

Q3. ワークショップで問題点を出すと、人間関係が悪くなりそうで不安です。

A. その不安は、とても大切な視点です。
だからこそ、ワークショップの冒頭で「目的は“人”ではなく“プロセス”に焦点を当てることです」と、全員にしっかり共有することが欠かせません。誰かを責めるのではなく、「仕組みによって誰でもミスしやすくなっているのかもしれない」という視点を持つことで、建設的な議論が生まれやすくなります。グランドルールを丁寧に設定するだけで、場の雰囲気は大きく変わります。とだと明確にしましょう。

Q4. 現場が「今のやり方で困っていない」と言って協力してくれません

A. 変化への抵抗には、背景があります。
「新しい方法のメリットが伝わっていない」「過去にツール導入でうまくいかなかった経験がある」
こうした思い込みや不信感が、協力を妨げているケースは少なくありません。まずは小さな範囲で、短時間のワークショップを実施してみるのがおすすめです。現場の人たち自身に課題を発見してもらい、「これなら自分たちでも変えられそう」と感じてもらうこと。この当事者意識こそが、変化を受け入れるきっかけになります。

Q5. Excelマクロを使って一時的に業務を効率化しています。それではだめですか?

A. 一時的な対処としては有効かもしれませんが、持続的な改善にはつながりにくいのが実情です。
Excelマクロは便利な反面、「作成者にしかわからない」「管理が属人化する」「バージョン管理が難しい」「壊れやすい」といったリスクを抱えています。結果として、別の形の“非効率”を生み出してしまう可能性が高いのです。継続的かつチーム全体で運用できる改善を目指すのであれば、Excel依存から一歩抜け出すことをおすすめします。

まとめ:より効率的な職場への第一歩を、今日から始めよう

業務改善は、「ツールを導入すること」ではなく、「現場の課題に気づき、共有し、行動すること」から始まります。本記事でご紹介したステップ――診断、可視化、優先順位付け――を通じて、非効率の原因を明らかにし、チームで取り組む土台をつくることができます。

紙やExcelに頼った業務、確認の多い作業、属人化したプロセスなどを見直し、改善効果が高く取り組みやすい“クイックウィン”から着手するのが効果的です。すべてを一度に変えようとするのではなく、小さな成功体験を積み重ねていくことが、職場全体の変化につながります。

大切なのは、「入力を楽にする」だけで終わらせず、集めた情報を活かす仕組みを整えることです。その循環ができれば、現場の負担が減り、組織としての判断力や対応力も大きく向上します。

試しに30分だけでもひとつの業務について話し合ってみてください。その一歩が、より良い未来への確かな起点になります。

記事編集

Picture of ジュガール編集部

ジュガール編集部

業務に役立つ情報をお届けします。

目次