ワークフローシステム講座

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AI-RPAとは?従来のRPAとの違いと導入メリットを徹底解説【2025年最新版】

目次

この記事のポイント

  • オートメーションの歴史と、なぜRPAに「知能」が必要になったのかという背景。
  • 従来型RPAが抱える「非構造化データに対応できない」「判断ができない」といった構造的限界。
  • AI-RPAが「見て、読んで、考えて、判断する」といった人間の認知能力をどのように実現しているかの詳細な仕組み。
  • 従来型RPAとAI-RPAの5つの決定的差異と、その戦略的意味。
  • AI-RPAがもたらすコスト削減以上の戦略的メリットと、それを実現する具体的な業務活用例。
  • AI-RPA導入を成功に導くための実践的なロードマップと、避けるべき落とし穴。

はじめに:なぜあなたの会社のRPAは「単純作業」で止まってしまうのか?

概要

多くの企業がRPAを導入し業務効率化を進める一方で、その効果が「単純作業の自動化」に留まり、期待したほどの成果を得られていないケースが少なくありません。その根本原因は、現代ビジネスが直面するデータの爆発的な増加と複雑化に、従来のRPAが対応しきれていない点にあります。本記事では、この課題を解決するAI-RPAの本質を、オートメーションの歴史的進化の文脈から紐解きます。

詳細

事業プロセスの自動化は、Excelマクロや単純なスクリプトから始まりました。その後、既存のシステムに手を加えることなく、人間のように画面操作を自動化するRPA(Robotic Process Automation)が登場し、多くの企業で導入が進みました。

「RPAを導入して請求書処理を自動化したが、フォーマットの違う請求書が来ると止まってしまう」

「システム間のデータ入力は自動化できたが、結局その前後の確認や判断業務は人間のままだ」

RPAを活用する多くの企業で、このような「壁」に直面しています。これは、従来のRPAが、あらかじめ決められた厳格なルール通りにしか動けない「手足」の自動化に過ぎないためです。

このパラダイムに大きな変化を迫っているのが、企業内で扱われるデータの性質の劇的な変化です。かつて業務システムの中心は、行と列が整備された「構造化データ」でした。しかし、デジタルトランスフォーメーションの進展により、今やビジネスの現場で扱われる情報の8割は、メール本文、PDFの契約書、SNSの投稿、画像といった、決まった形のない非構造化データであると言われています。実際に、総務省の「令和5年版 情報通信白書」においても、多くの企業がデータ駆動型経営への移行を目指す一方で、データ利活用のための人材やノウハウ不足といった課題に直面していることが指摘されています。

これらの非構造化データには計り知れないビジネス価値が眠っていますが、ルールベースの従来型RPAではその価値を解き放つことはできません。この、従来型RPAでは越えられなかった壁を打ち破るのが、本記事のテーマであるAI-RPAです。AI-RPAは、AI(人工知能)という「脳」を搭載することで、RPAを単なる作業代行ツールから、自律的に思考・判断する「知的労働者(デジタルワークフォース)」へと進化させます。

この記事は、より大きな概念であるワークフロー4.0で描かれる「AIが自律的に業務を遂行する未来」において、AI-RPAがどのような役割を果たすのかを深く理解するためのものです。AI-RPAの本質を知ることは、貴社のデジタルトランスフォーメーションを次のステージへ進めるための、確かな羅針盤となるでしょう。

第1章:従来型RPAの再定義:その本質と越えられない「オートメーションの天井」

概要

AI-RPAがもたらす飛躍を正確に理解するためには、まずその土台である従来型RPAの本質と、その構造的な限界点を深く掘り下げる必要があります。従来型RPAは、強力ではあるものの、究極的には不完全なソリューションであり、その限界こそが次なる進化の必要性を示しています。

従来型RPAの定義とコア技術

従来型RPAは、人間がコンピュータのUI(User Interface:ユーザーインターフェース。画面やボタンなど、人がコンピュータを操作するための接点のこと)を操作するのと同様の方法で、定型的かつ反復的な業務を自動化するソフトウェアロボットです。その動作は、あらかじめ定義されたスクリプト、ワークフロー、そして厳格な意思決定ツリーに基づいています。開発者は、「もしAならばBを実行し、CならばDを実行する」といった形で、ボットの行動を正確にプログラムします。

この決定論的(100%決められたルール通りに動くこと)な性質が信頼性を担保する一方で、脆弱性の根源ともなっています。例えば、ウェブサイトのUIが更新され、ボタンの位置が数ピクセル移動しただけで、ボットは対象を見失い、プロセスは停止してしまいます。

致命的な限界:「オートメーションの天井」

その輝かしいメリットの裏で、従来型RPAは3つの越えられない壁に直面しています。これこそが「オートメーションの天井」の正体です。

限界の種類具体的な内容ビジネスへの影響
1. 非構造化データの処理不能ExcelやDBなど決まった形式のデータしか扱えない。PDFやメール本文は理解できない。業務全体の8割を占める非構造化データが自動化の対象外となり、効果が限定的になる。
2. 判断能力の欠如事前にプログラムされたルールから外れる例外や、状況に応じた判断ができない。「この問い合わせは緊急性が高いか?」といった判断業務は人間に残り、真の効率化を妨げる。
3. 脆弱性(Brittleness)アプリケーションの画面デザインが少し変わっただけでエラーを起こし、停止してしまう。自動化の対象を広げるほど、頻繁なメンテナンスが必要になり、維持管理コストが増大する。

これらの限界を考察すると、従来型RPAは人間の「手」を自動化する「デジタルレイバー」であり、「脳」を代替するものではないことがわかります。工場の組立ラインの機械が、物理作業はこなせても、部品の欠陥を自律的に判断できないのと同じです。この本質的な限界を理解することが、AI-RPAの必要性を知る第一歩となります。

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第2章:AI-RPAとは何か?~AIという「脳」を手に入れたRPA~

概要

AI-RPA(Intelligent Process Automation:インテリジェント・プロセス・オートメーション)とは、従来型RPAにAIの「認知能力」を統合することで、「オートメーションの天井」を打ち破るテクノロジーです。市場調査会社のGrand View Researchは、このインテリジェント・プロセス・オートメーション市場が2030年まで年平均成長率(CAGR)で大幅な成長を遂げると予測しており、その注目度の高さを示しています。AI-RPAは単一の技術ではなく、複数のAI技術を組み合わせた「AIツールキット」として機能し、人間のように「見て、読んで、考えて、判断する」業務の自動化を実現します。

インテリジェント化を実現する「AIツールキット」

AI-RPAの知能は、それぞれが異なる認知機能を担うAIコンポーネントの連携によって実現されます。

AI技術人間の能力に例えるとビジネスにおける役割と効果
機械学習(ML)経験から学ぶ「脳」過去のデータから「成功パターン」や「リスクの兆候」を学習し、予測や分類といった判断を行う。
自然言語処理(NLP)言葉を理解する「耳と声」メールやチャットの内容を読み解き、顧客の意図や感情を把握。コミュニケーション業務を自動化する。
インテリジェントOCR / コンピュータビジョン視覚情報を解釈する「目」多様なレイアウトの帳票や手書き文字を読み取り、データ化。紙ベースの業務を自動化の対象に広げる。
プロセスマイニング業務を分析する「コンサルタント」実際の業務プロセスを可視化し、どこにボトルネックがあるか、どこを自動化すべきかをデータに基づき特定する。

AI-RPAの核心:継続的な自己改善ループ

これらのAIツールキットが連携することで、AI-RPAは静的なプログラムから、動的な学習システムへと変貌します。

例えば、AI-OCRが未知のフォーマットの請求書に遭遇した場合、最初は人間のオペレーターによる修正が必要かもしれません。しかし、機械学習モデルはその修正結果を「教師データ」として学習します。その結果、次に類似の請求書が来た際には、人間の介入なしで正しく処理できるようになります。

これは、(a) AIがデータを処理し、(b) 例外や誤りから学び、(c) 次回のパフォーマンスを向上させる、という継続的な改善サイクルです。従来型RPAのボットは導入後も能力が変わりませんが、AI-RPAのボットは稼働すればするほど賢くなり、より多くの業務に対応できるようになります。これは、AI-RPAへの投資対効果(ROI)が時間と共に上昇し続けることを意味します。

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第3章:【徹底比較】AI-RPA vs 従来型RPA 5つの決定的差異

概要

AI-RPAと従来型RPAの違いは、単なる機能追加ではなく、根本的な思想の転換です。ここでは、業務遂行能力から戦略的価値に至るまで、両者の本質的な違いを5つの軸で徹底比較します。この違いを理解することが、適切なツール選定と導入成功の鍵となります。

比較分析サマリー

機能/次元従来型RPA (線路の上を走る列車)AI-RPA (自動運転車)
1. データ処理能力構造化データのみ
(Excel, CSVなど)
構造化・非構造化データ
(PDF, メール, 画像, 音声)
2. 意思決定ロジック決定論的
(If-Thenルール)
確率論的
(学習に基づく判断)
3. 例外処理能力停止とアラート
(人間の介入が必須)
自己修正と学習
(自律的な対応と能力向上)
4. 自動化の対象個別の「タスク」
(例:データ入力)
エンドツーエンドの「プロセス」
(例:請求書処理全体)
5. システム耐障害性低い(脆弱)(UI変更で停止)高い(適応的)
(UI変更に柔軟に対応)

比喩で理解する本質的な違い

この違いを比喩で表現するならば、従来型RPAは「線路の上を走る列車」です。線路が整備され、障害物がない限り、驚異的な効率で目的地に到達できます。

一方、AI-RPAは「自動運転車」に例えられます。目的地は決まっていますが、交通状況を読み、道路標識を解釈し、障害物を避けながら、動的な環境に適応してルートを自律的に選択・変更することができます。

要するに、ビジネスの現場で言えば、従来型RPAは「指示されたことだけを正確にこなす新入社員」、AI-RPAは「過去の経験から学び、状況に応じて最適な行動を自分で考えて実行できる中堅社員」のような存在です。 この視点の転換は、社内における自動化へのアプローチを、IT部門主導の効率化活動から、事業部門が主導する全社的な変革イニシアチブへと昇華させる力を持っています。

第4章:ビジネスがこう変わる!AI-RPAがもたらす4つの戦略的メリット

概要

AI-RPAがもたらす価値は、人件費削減といった直接的なコスト削減に留まりません。むしろ、ビジネスの競争力を根本から強化する、戦略的なメリットにこそ真価があります。ここでは、具体的なユースケースと共に4つの代表的なメリットを解説します。

戦略的メリット解決されるビジネス課題具体的なユースケース例
1. エンドツーエンドのプロセス自動化部門ごとにシステムが分断され、業務プロセスが滞りがち。【財務・経理】 請求書の受領からERPへの入力、照合、承認、支払処理までをワンストップで実行。
2. 非構造化データに眠る価値の解放顧客からのメールやアンケートなど、価値ある情報が活用できていない。【カスタマーサービス】 問い合わせ内容をAIが分析し、緊急度や種類に応じて最適な担当者へ自動で割り振る。
3. 従業員体験の向上と高付加価値業務へのシフト優秀な社員が、書類の確認やデータの分類といった単調な作業に時間を取られている。【人事】 多様な形式の履歴書をAIが読み込み、募集要項と照合して候補者を自動でスコアリングする。
4. ビジネスの俊敏性と回復力の向上需要の急増や予期せぬトラブル発生時に、リソースが足りず対応が追いつかない。【小売・EC】 セール期間中、注文処理や問い合わせ対応を行うボットの数を需要に応じて瞬時に増減させる。

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第5章:【深掘り解説】ROIの再定義:コスト削減から「価値創造」へ

概要

従来型RPAの投資対効果は、主に「人件費削減」という分かりやすい指標で測られてきました。しかし、AI-RPAの真の価値は、その先にあります。ここでは、「価値創造」が具体的にどのようなビジネスインパクトをもたらすのか、そのメカニズムを深掘りします。

価値創造のメカニズム:ソフトな便益がハードな成果を生む

AI-RPAがもたらす「ソフトな便益」(例:意思決定の質の向上、顧客満足度の向上)は、決して曖昧な精神論ではありません。これらは巡り巡って、売上向上やコスト削減といった「ハードな成果」に直結します。

ソフトな便益(AI-RPAが直接もたらす変化)具体的なビジネス成果(ハードな成果)
1. 意思決定の質の向上
AIがデータに基づき、人間が見落としていたリスクや機会を提示する。
リスク低減(例:不正取引の未然防止による損失回避)
収益機会の最大化(例:優良顧客へのアップセル提案)
2. 顧客満足度の向上
問い合わせへの即時対応や、パーソナライズされた提案が可能になる。
解約率(チャーンレート)の低下
顧客生涯価値(LTV)の向上
ブランドイメージ向上による新規顧客獲得
3. 従業員満足度の向上
単調な作業から解放され、創造的・戦略的な業務に集中できる。
離職率の低下による採用・教育コストの削減
イノベーションの促進(例:新商品・サービス開発)
生産性の向上
4. ビジネスの俊敏性向上
市場の変化や需要の変動に、迅速かつ柔軟に対応できる。
機会損失の最小化(例:セール時の受注機会を逃さない)
事業継続計画(BCP)の強化

【具体例】「顧客満足度向上」がもたらす価値創造サイクル

AI-RPAの導入が、どのようにして企業の収益基盤を強化するのか、カスタマーサポートを例に見てみましょう。

  1. 【導入】 問い合わせ対応にAI-RPAを導入。
  • AIがメール内容を24時間365日分析し、緊急度や要件を判断。簡単な質問には即座に自動回答し、複雑な問題は最適な担当者へ即時エスカレーション。
  1. 【ソフトな便益①】 顧客の待ち時間が劇的に短縮。
  • 顧客は「すぐに返事が来る」「たらい回しにされない」というポジティブな体験を得る。→ 顧客満足度が向上
  1. 【ソフトな便益②】 人間のオペレーターは高度な問題に集中。
  • 単調な一次対応から解放され、専門知識や共感力が求められる複雑な問題解決に集中できる。→ 従業員満足度(ES)が向上
  1. 【ハードな成果】 満足した顧客と従業員が、企業の成長を牽引。
  • 顧客: 満足度が高い顧客は、製品を継続利用し(解約率低下)、知人にも勧めてくれる(新規顧客獲得)。→ LTV(顧客生涯価値)が向上し、売上が増加
  • 従業員: やりがいを感じる従業員は、離職しにくく(離職率低下)、より良いサービスを提供しようと努力する。→ 採用・教育コストが削減され、サービス品質がさらに向上

このように、AI-RPAへの投資は、単なるコスト削減に留まらず、顧客と従業員の満足度を起点とした持続的な成長サイクルを生み出す、戦略的な一手となるのです。

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第6章:AI-RPA導入を成功させる実践的ロードマップ

概要

AI-RPAの導入は、一度に全社展開を目指す「ビッグバン」アプローチではなく、慎重に計画された段階的アプローチを取るべきです。ここでは、ビジネスリーダーとITリーダーが導入の複雑な道のりを乗り越えるための、実践的な3フェーズのロードマップを提示します。

フェーズ目的主要なアクション
フェーズ1:戦略と発見“Why” & “Where”の特定
(なぜ、どこに自動化を適用するか)
・CoE(推進拠点)の設立
・プロセスマイニングによる機会発見
・具体的なビジネス目標(KPI)の設定
フェーズ2:パイロットと価値実証“How”の実践
(小規模に試し、価値を証明する)
・インパクトのあるパイロットプロジェクト選定
・部門横断型チームの組成
・高品質なデータによるAIモデルの訓練
フェーズ3:スケールと全社展開“Enterprise-Wide”への拡張
(成功を全社に広げ、定着させる)
・ガバナンス(統制)フレームワークの構築
・再利用可能なコンポーネントの作成
・強力なチェンジマネジメントの実施

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第7章:導入の成否を分ける5つの重要ポイント

概要

AI-RPA導入の成否は、技術そのものよりも、むしろ組織的な要因によって左右されます。情報処理推進機構(IPA)の「AI白書2023」でも、AI導入の課題として技術的な側面だけでなく、人材育成や組織体制の重要性が強調されています。ここでは、プロジェクトを推進する上で特に注意すべき5つの障壁と成功要因を解説します。

ポイント障壁となるケース(失敗の要因)成功への鍵
1. データ戦略データ品質が低い、データが部門ごとにサイロ化している、ガバナンスが不在。AI-RPA導入の前提として、全社的なデータ戦略を策定する。
2. 人材とスキルAIを扱える人材が社内にいない、育成計画もない。育成、採用、外部パートナーとの協業など、明確な人材戦略を持つ。
3. チェンジマネジメント従業員の不安や抵抗を放置し、現場の協力が得られない。自動化は「拡張」であると伝え、具体的な再教育パスを示す。
4. 期待値のコントロール最初から壮大で複雑すぎるプロジェクトを目指し、すぐに成果が出ないと諦める。「小さく賢く始め、速やかにスケールさせる」アプローチを取る。
5. ベンダー選定機能がバラバラのツールを組み合わせ、開発・運用が複雑化する。必要なAI機能が統合された、直感的に使えるプラットフォームを選ぶ。

これらの要素を総合すると、AI-RPAの導入は単なる「テクノロジープロジェクト」ではなく、企業文化や組織構造の変革を伴う「ビジネストランスフォーメーションプログラム」であるという結論に至ります。

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第8章:未来展望:AI-RPAの先にある「自律型企業」の姿

概要

AI-RPAは、企業の自動化ジャーニーにおける終着点ではありません。むしろそれは、より壮大で野心的な未来のビジョン、すなわち「ハイパーオートメーション」を実現するための、不可欠な礎石です。

ハイパーオートメーションとは?

「ハイパーオートメーション」とは、米調査会社のGartner社が提唱した概念であり、AI-RPAを中核としながら、プロセスマイニング、ローコード/ノーコード開発プラットフォーム、iPaaS(Integration Platform as a Service:様々なクラウドサービスを簡単につなぐための『ハブ』のようなサービス)といった多様な技術を戦略的に組み合わせ、ビジネスのあらゆるプロセスを自動化するアプローチです。

AI-RPA自身の進化:生成AIとの融合

次なるフロンティアは、大規模言語モデル(LLM)に代表される生成AI(Generative AI)との統合です。これにより、AI-RPAの能力は「理解」から「創造」へと拡張されます。例えば、顧客からのクレームメールの内容を理解するだけでなく、その顧客の過去の購買履歴や感情を踏まえ、共感に満ちたパーソナライズされた返信メールの草案を自動で生成するといった、高度なコミュニケーション自動化が可能になります。

究極のゴール:自律型企業(Autonomous Enterprise)へ

ハイパーオートメーションが目指す究極のゴールは、ビジネス環境の変化をリアルタイムで感知し、データから学習し、人間の介在を最小限に抑えながら自己を適応させていく「自律型企業(Autonomous Enterprise)」の実現です。AI-RPAは、この壮大なビジョンへと至る旅路における、決定的に重要な一歩なのです。

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結論:AI-RPAは、業務を「処理」する道具から、ビジネスを「推進」するパートナーへ

本記事では、従来型RPAの限界からAI-RPAの台頭、その戦略的価値、そしてハイパーオートメーションという未来に至るまで、エンタープライズ・オートメーションの進化を多角的に分析してきました。

AI-RPAは、単なる作業の自動化ツールではありません。それは、これまで人間にしか不可能だった「判断」の領域に踏み込み、企業の業務プロセスを知的に変革する強力なエンジンです。

要するに、AI-RPAを導入するということは、言われたことだけをこなす「作業者」を雇うのではなく、自ら学び成長し、より複雑な問題を解決してくれる「有能な社員」をデジタル空間に迎え入れることに他なりません。 この進化は、ワークフロー4.0が目指す、AIエージェントが自律的に業務を遂行する未来への、重要かつ現実的な一歩と言えるでしょう。

AI-RPAの導入や、さらにその先のAIエージェントを活用した自律的なワークフローの構築には、専門的な知見が不可欠です。ジュガールワークフローは、企業の業務プロセスを知的に自動化するプラットフォームですが、現在、AI-RPA機能はまだ組み込まれておりません。しかし、お客様のビジネスをさらに加速させるため、AI-RPA機能は将来的に組み込む予定です。皆様からのご要望をいただければ、その導入時期も早まりますので、ぜひご期待ください!

開発元であるVeBuIn株式会社のAIチームは、大学でAIカリキュラムを取得し、最先端のAI理論を学んだ技術者、AI理論を学んだメンバーで構成されています。私たちは、お客様のビジネスに最適化された独自のAI開発も積極的に承ります。

まずは身近な業務の「判断」を自動化することから、未来の働き方を創造する一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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引用・参考文献

AI-RPAに関するよくある質問(FAQ)

Q1: AI-RPAと、従来のRPAやChatGPTとの違いは何ですか?

A1: 従来のRPAは決められた「操作」を繰り返す手足、ChatGPTは指示に応じた「文章生成」を行う対話ツールです。一方、AI-RPAは、これらのツールを自律的に使いこなし、状況を「判断」しながら一連の業務プロセスを遂行する『司令塔』の役割を果たします。

Q2: AI-RPAはどのような業務に向いていますか?

A2: 「様々なフォーマットの請求書を処理する」「顧客からの問い合わせ内容を判断して振り分ける」「添付された契約書のリスクをチェックする」など、非構造化データを扱い、かつ人間の判断が必要となる知的業務に向いています。

Q3: AI-RPAの導入には、専門のAIエンジニアが必要ですか?

A3: 必ずしも必要ではありません。優れたAI-RPAプラットフォームは、AI-OCRやNLPといった複雑なAI機能を、業務担当者がプログラミング知識なしで利用できるよう設計されています。しかし、自社の業務に最適化された高度なAIモデルを構築・運用する際には、専門家の支援が有効です。

Q4: AI-RPA導入で失敗しないためのポイントは何ですか?

A4: 「AI導入」そのものを目的にせず、「どの業務課題を解決したいか」という明確なビジネス目標を設定することが最も重要です。また、AIの学習に不可欠な「質の高いデータ」を準備すること、そして現場の従業員を巻き込み、変化への抵抗を乗り越える「チェンジマネジメント」も成功の鍵となります。

Q5: AI-RPAとAIエージェントは同じものですか?

A5: AI-RPAは、AIエージェントが業務を遂行するために利用する、強力な「ツール」の一つと考えることができます。AIエージェントは、AI-RPAを含む様々なツール(API、データベースなど)を自律的に使いこなし、より大きな目標を達成する、さらに進んだ概念です。AI-RPAは、AIエージェントが活躍する未来への重要なステップとなります。

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記事監修

川﨑 純平

VeBuIn株式会社 取締役 マーケティング責任者 (CMO)

元株式会社ライトオン代表取締役社長。申請者(店長)、承認者(部長)、業務担当者(経理/総務)、内部監査、IT責任者、社長まで、ワークフローのあらゆる立場を実務で経験。実体験に裏打ちされた知見を活かし、VeBuIn株式会社にてプロダクト戦略と本記事シリーズの編集を担当。現場の課題解決に繋がる実践的な情報を提供します。