ワークフローシステム講座

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DX推進指標とは?自己診断でAI時代のロードマップを描く方法

目次

この記事のポイント

  • 多くの企業が陥るDXの失敗パターンと、その解決策としてのDX推進指標の全体像がわかります。
  • 自己診断結果から、自社のDX成熟度を客観的に把握し次に取るべき具体的なアクションを策定するためのステップがわかります。
  • AI時代の競争優位性を確立するためのロードマップとして、「業務の言語化(BPM)」「データガバナンス」「AIエージェント活用」という3つのステップが理解できます。
  • 自己診断結果から見える、日本企業全体の課題(サイロ化、人材不足など)と、自社が取るべき解決策が明確になります。
  • DX推進指標の活用を通じて、バックオフィス業務をコストセンターから戦略部門へと変革させるヒントが得られます。

1. はじめに:理想と現実のギャップ – 組織のDX成熟度をどう測るか?

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が経営会議で語られて久しいですが、多くの日本企業において、その取り組みは依然として停滞しています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表した「2024年版DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」によると、自己診断を提出した企業のDX成熟度の平均値は、6段階評価でわずか1.67にとどまっています。一方で、3年後の目標値は平均3.34であり、理想と現実の間には深刻なギャップが存在します。

このギャップは、単に「技術を導入すればDXが進む」という単純な問題ではないことを示しています。では、どうすればこの停滞を打破し、組織全体を動かすことができるのでしょうか。

その答えの一つが、経済産業省が策定した「DX推進指標」です。これは単なる評価ツールではなく、組織の現状と課題を客観的に可視化し、経営層から現場までが共通の言語で議論するための強力なフレームワークです。本記事では、総務部門や内部監査部門の責任者の皆様が、この指標を羅針盤としてAI時代を乗り切るための具体的なロードマップを描く方法を解説します。

2. 第1章 DX推進指標の全体像:なぜ「自己診断」がAI時代の羅針盤になるのか

2.1. 誕生の背景:技術先行の失敗パターンを乗り越える

DX推進指標は、多くの日本企業が陥りがちな3つの典型的な失敗パターンを乗り越えるために策定されました。

  • 技術起点の思考
    「AIやIoTといった最新技術を使って何かできないか?」という発想は、本来の目的である「顧客価値の創出」を見失う原因となります。DXは、最新技術を導入すること自体が目的ではありません。
  • 危機感の欠如とビジョンの不在
    将来の破壊的変化に対する危機感が経営層と現場で共有されず、全社的なビジョンがないため、DXの取り組みが一部の部門に限定されてしまいます。
  • 仕組みを伴わない号令
    経営トップがDXの重要性を唱えても、それを支える組織、プロセス、企業文化、評価制度といった仕組みが伴わないため、現場が動けません。

DX推進指標の最大の目的は、各項目に点数をつけることではなく、これらの構造的な問題に組織全体で向き合い、対話を通じて認識を共有することにあります。この指標は、まさに「対話促進ツール」として機能するのです。

2.2. 変革の両輪:経営とITを統合するフレームワーク

DX推進指標は、DXを推進するために不可欠な「経営」と「ITシステム」の2つの側面から構成されています。このフレームワークは、技術導入に先行して、まず戦略と組織体制を問うという明確な意図を反映しています。

カテゴリー評価項目(一部抜粋)業務への影響と重要性
DX推進のための経営のあり方、仕組みビジョンと危機感の共有、経営トップのコミットメント、マインドセット・企業文化、推進体制経営層のリーダーシップがなければ、DXは部門最適の域を出ません。全社的なビジョンを共有することで、組織全体が一体となって動く原動力となります。
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築ITシステム基盤、データ活用、セキュリティ、運用体制どんなに素晴らしい戦略があっても、それを実現するITシステムが老朽化(レガシー化)していたり、部門ごとに分断されていては絵に描いた餅です。

このフレームワークは、DX成功の鍵が「経営」と「ITシステム」のバランスにあることを示しています。IPAの分析レポートでも、DX先行企業はIT視点の指標よりも経営視点の指標のスコアが高い傾向が明らかになっています。

2.3. DX成熟度6段階のスペクトラム:自社の現在地を正確に知る

DX推進指標では、企業の取り組み状況を0から5までの6段階の「成熟度レベル」で評価します。このレベルを理解することで、自社の現在地と目指すべき姿を具体的に描くことができます。

レベル名称(和名)主な特徴
レベル0未着手 (Uninitiated)DXという言葉は認識しているが、具体的な活動は何も行われていない状態。
レベル1一部での散発的実施 (Sporadic)特定の部署や個人が個別の課題解決のためにITツールを導入するものの、全社的な戦略や連携がない状態。多くの日本企業がここに留まっています。
レベル2全社戦略に基づく一部でのDX推進 (Partial)全社的なDXの重要性は認識されているが、取り組みはまだ限定的で、部門横断的な展開には至っていない状態。
レベル3全社戦略に基づく部門横断的推進 (Cross-Functional)全社的な戦略に基づき、部門横断的なプロジェクトが推進されている状態。このレベルへの到達が、本格的なDXの入り口です。
レベル4全社戦略に基づく持続的実施 (Sustainable)ビジネスモデルの変革や新たな価値創出が、持続的に行われている状態。
レベル5グローバル市場における競争力を有するレベル (Globally Competitive)業界の破壊者となるような、革新的な製品・サービスを継続的に創出している状態。

自己診断の結果をこのレベルに照らし合わせることで、単なる数値以上の意味を読み取ることができます。例えば、あなたの部署のスコアが低い場合、それは部署固有の問題だけでなく、「組織全体としてレベル2の壁を越えられていない」という構造的な課題に起因している可能性が高いのです。

3. 第2章 自己診断の実践ガイド:議論を成果に変える5つのステップ

DX推進指標は、ただ回答を提出するだけでは意味がありません。診断プロセス自体が、組織を変えるための貴重な機会となります。ここでは、実務に即した5つのステップで、その活用方法を解説します。

3.1. ステップ1:診断の目的とチーム編成

診断を始める前に、まず「良い点を取ること」ではなく「自社の現状と課題について率直な議論をすること」が目的であることを明確にしましょう。そして、以下のメンバーで診断チームを編成します。

  • 経営幹部:DXのビジョンを語り、変革をリードする役割。
  • 事業部門の責任者:現場の課題や顧客ニーズを最もよく理解している。
  • IT部門の責任者:既存システムの状況や技術的な制約を把握している。
  • 総務・内部監査部門の責任者:規程やコンプライアンスの観点からDXのガバナンスを確保する。

【まとめ】自己診断チームに不可欠な役割

役割期待される貢献
経営幹部企業全体のビジョンと戦略的優先順位を提示し、チームの議論を方向づける。
事業部門の責任者現場の具体的な課題と、DXがもたらすビジネス価値をリアルな言葉で語る。
IT部門の責任者既存システムの状況や技術的な実現可能性について、現実的な視点を提供する。
総務・内部監査の責任者変革が規程やコンプライアンスに適合しているかを監督し、リスク管理の観点から助言する。

3.2. ステップ2:現状の業務を「言語化」する(BPM)

診断フォーマットの各項目に回答する前に、チームで「現状の業務を言葉にする」という重要なステップを踏みましょう。これが、後述するAI活用に不可欠なBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の第一歩です。

  • 業務プロセスの可視化:まずは、現状の業務フロー(As-Is)を、フローチャートや文章で明確に描き出します。「この申請書は、誰が、どのタイミングで、どういう判断基準で承認しているのか?」といった暗黙知を、全員が理解できる形に言語化します。
  • 課題の明確化:可視化された業務フローを見て、「どこで承認が滞留しているのか」「この工程は本当に必要なのか」といった、非効率な部分(ボトルネック)を特定します。

▶関連記事:BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは?AI時代の業務改善と内部統制を加速する経営手法

3.3. ステップ3:結果の解釈とベンチマーク分析

自己診断結果をIPAに提出すると、ベンチマークレポートを入手できます。このレポートは、自社のスコアを全提出企業や、同じ業種・規模の企業の平均値と比較できるため、極めて強力なツールとなります。

活用例期待できる効果
全体における自社の位置づけの把握自社のDX推進度が、業界内で先行しているのか、遅れているのかを客観的に判断できます。
内部の合意形成の促進「この項目は業界平均を大きく下回っており、競争上の弱点となっている」といった客観的なデータを示すことで、感情的な対立を避け、建設的な議論を促すことができます。
課題の特定と優先順位付け自社固有の課題なのか、業界共通の構造的な課題なのかを切り分けることができ、リソースをどこに投下すべきか判断できます。

3.4. ステップ4:データ駆動型アクションプランの策定

ベンチマーク分析によって特定された課題を基に、具体的なアクションプランを策定します。

  1. ギャップの特定:理想(目標値)と現実(現在値)のギャップが最も大きい項目を特定します。
  2. 優先順位の決定:すべての課題に同時に取り組むことはできません。事業戦略上最もクリティカルな課題から着手するよう、優先順位を決定します。
  3. KPIの設定:アクションプランの進捗と効果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。「サービス開発期間の短縮」「顧客満足度の向上」など、具体的な数値で追跡できるようにすることが重要です。

【まとめ】アクションプラン策定の3つの視点

視点目的
戦略性DXが、経営目標にどう貢献するかを明確にする。
具体性誰が、いつまでに、何をするかを明確に定義する。
測定可能性計画の進捗と成果を、KPIなどの客観的な数値で追跡できるようにする。

3.5. ステップ5:継続的改善の仕組みを構築する

一度きりの自己診断は、ある時点でのスナップショットに過ぎません。DXを「プロジェクト」から「マネジメントシステム」へと昇華させるため、年に一度の「健康診断」のように、DX推進指標を用いた診断を組織のPDCAサイクルに組み込みましょう。

4. 第3章 ロードマップの設計図:DXをAI時代の競争力に変える3つのステップ

DX推進指標による自己診断は、あくまで旅の出発点です。その結果を、AI時代の競争優位性を確立するための具体的なロードマップへと昇華させるには、以下の3つのステップを踏む必要があります。

【ロードマップ概観】AI時代を勝ち抜くための3つのステップ

STEPテーマ目的主な活動
STEP1業務の言語化(BPM)AIが理解できる「会社の公式ルール」を整備する。業務プロセスの可視化、AS-IS/TO-BEの設計。
STEP2データガバナンスとMDMAIに「信頼できる唯一の情報源」を与える。データ品質の維持、マスターデータ管理の徹底。
STEP3AIエージェント活用人間を定型業務から解放し、創造的な仕事に集中させる。AIエージェントによる業務自動化、人間の役割再定義。

4.1. STEP1:業務を言語化し、AI活用の土台を固める(BPM)

AIは魔法の箱ではありません。AIに仕事を任せるには、まず「会社の公式な仕事のやり方」を、AIが理解できる言葉で教えてあげる必要があります。この「業務の言語化」こそが、BPMの核心です。

BPMは、単なる業務フロー図の作成ではありません。それは、業務を「AS-IS(現状)」と「TO-BE(あるべき姿)」という2つの視点から再定義する活動です。

  • AS-ISの言語化:まず、現状の業務プロセスを客観的に可視化し、無駄や非効率を洗い出します。現場の「なぜかそうなっている」という暗黙知を、チームで議論しながら言語化することが重要です。
  • TO-BEの設計:次に、AIに任せたい業務、人間がやるべき業務を明確に分け、より効率的で統制の取れた業務プロセスを設計します。例えば、「領収書の入力はAIに任せ、人間は内容の確認と承認に集中する」といった新しい役割分担を定義します。

【まとめ】BPMがAI活用にもたらす価値

価値詳細
業務マニュアルの生成AIが学習・実行できる「公式な仕事のやり方」を定義し、業務の属人化を根本から解消します。
プロセス改善AI導入前に非効率な業務を特定・改善することで、「非効率な業務が、ものすごい速さで実行される」という事態を防ぎます。
役割の再定義人間とAIの役割分担を明確にし、人間がより付加価値の高い仕事に集中できる環境を創出します。

4.2. STEP2:AIに「信頼できるデータ」を与える(データガバナンスとMDM)

AIの判断の質は、学習するデータの質に完全に依存します。「ガーベージイン・ガーベージアウト(GIGO)」の原則は、AI時代においてこれまで以上に重い意味を持ちます。

  • データガバナンスの確立:データを企業の公式な資産として管理するためのルールと体制(誰が、いつ、どのようにデータを利用できるか)を定めます。これは、いわば「会社のデータに関する憲法」を定める活動です。
  • マスターデータ管理(MDM):顧客や製品といった企業活動の根幹となる重要データを、全社で統一された「信頼できる唯一の情報源(ゴールデンレコード)」として管理します。MDMは、AIが正確な予測や判断を行うための、不可欠な「燃料」となるのです。

【まとめ】質の悪いデータがもたらすコストとリスク

リスクの側面具体的な内容
財務的リスクマーケティング費用の浪費、誤った需要予測による機会損失、データ修正作業による人件費の無駄。
戦略的リスク欠陥データに基づく誤った経営判断、顧客からの信頼失墜、法規制違反による高額な罰金。

▶関連記事:ガーベージイン・ガーベージアウトとは?AI時代のデータ品質が経営を左右する理由

▶関連記事:マスターデータ管理(MDM)がなぜAI活用に不可欠なのか?信頼できるデータ基盤が自律型ワークフローを駆動する

この高品質なデータ基盤があって初めて、AIは正確な判断を下すことができます。この課題を解決する一つのソリューションがジュガールワークフローです。ワークフローが、データの生成から更新までのプロセスを統制することで、データの品質を継続的に維持する「門番」として機能します。

4.3. STEP3:AIで業務を自動化し、人間は「創造」に集中する(AIエージェント)

業務が言語化され、信頼できるデータ基盤が整った後、ようやくAIを「実行部隊」として活用するフェーズに入ります。AIエージェントは、人間が設定した目標に対し、自ら計画を立て、ツールを使いこなし、業務を完遂する「デジタル従業員」です。

【比較表】関連技術との違いを理解する

技術目的役割
生成AI人間の指示に基づきコンテンツを「生成」する。優秀なアシスタント
RPA人間がPC上で行う定型的なクリックや入力作業を「実行」する。デジタルな手足
AIエージェント与えられた目標を達成するために、自律的に思考し、生成AIやRPAを「使いこなす」。デジタルな従業員、司令塔

AIエージェントは、データ入力、集計、定型的な問い合わせ対応、申請内容の不備チェックなど、反復的でルールベースの「実行(HOW)」を担います。これにより、人間はAIが不得意な「なぜ、それをやるのか(WHY)」という目的の定義や、「何を解決すべき課題とするか(WHAT)」という戦略的な意思決定に集中できます。

▶関連記事:AIエージェントとは何か?ビジネスを自動化する「デジタル従業員」の衝撃【2025年最新版 完全ガイド】

▶関連記事:エージェンティックAIとは?AIチームが自律的に協業する未来の組織【2025年最新版・詳細解説】

5. 第4章 診断結果から見える日本企業の課題と解決策

2024年版のIPA分析レポートからは、日本企業が共通して直面している構造的な課題が明らかになっています。

5.1. データが語る日本の現実:「1.67」という停滞

レポートが示す平均値「1.67」は、多くの企業が部門最適の壁を越えられず、全社的な戦略としてDXを推進する段階に至っていない現実を物語っています。特に中小企業は平均1.40と、リソース不足が深刻な課題となっています。

  • 解決策:中小企業の場合は、大企業の先進事例をいきなり模倣するのではなく、まずは経営層の意識改革や、小規模な業務プロセスのデジタル化といった、身の丈に合った着実なステップから始めることが重要です。

5.2. 組織のサイロ化:DXを阻む見えない壁

DX推進指標のフレームワークが「経営とIT」の両輪を問うているにもかかわらず、多くの企業ではIT部門だけで診断が行われがちです。この「部門間のサイロ化」が、全社的なDXを阻む最大の原因です。特に、総務や内部監査部門の責任者の皆様は、このサイロ化を打破する役割を担うべきです。

  • 解決策:部門横断的なワークショップを開催し、DX推進指標を共通言語として用いることで、各部門の認識のズレを可視化し、協力体制を構築する機会としましょう。

5.3. 人材のボトルネック:IT部門任せからの脱却

レポートでは、事業会社(ユーザー企業)側で、ビジネスを深く理解し、それをデジタルでどう変革するかを構想・実行できる人材が慢性的に不足していることが指摘されています。

  • 解決策:DXはIT部門任せではなく、経営、事業、ITの各部門が協働する「チーム戦」です。IT部門の人材を育成するだけでなく、事業部門の担当者がデジタルリテラシーを向上させ、お互いの知見を融合させる仕組みを構築することが不可欠です。

【まとめ】DXを推進するコア人材と役割(経済産業省「デジタルスキル標準」参考)

人材類型主な役割
ビジネスアーキテクトDXで「何をやるか」を決め、事業変革をリードする。
デザイナー顧客が「使って嬉しい」と感じる体験を設計する。
データサイエンティストデータからビジネスの「お宝」を見つけ出す。
ソフトウェアエンジニアDXのアイデアを「動く形」にする。
サイバーセキュリティDXの「安全」を守り、会社の信頼を担保する。

▶関連記事:DX人材育成のロードマップ【2025年最新版】|リスキリングでAI時代を乗り越える戦略ガイド

6. まとめ:DX推進指標を、継続的な変革の触媒に

本記事で解説したように、DX推進指標は単なる評価ツールではなく、組織の変革を加速させるための強力な「触媒」です。

診断プロセスを通じて、これまで存在しなかった部門間の対話を生み出し、全社的な危機感とビジョンを共有する。その上で、診断結果とベンチマークデータを基に、具体的で優先順位のついたアクションプランを策定し、継続的な改善のサイクルに組み込む。この一連の流れを組織に定着させることこそが、DX成功への唯一の道です。

DX推進は、組織のあらゆる活動に影響を及ぼします。例えば、契約書や稟議書といった重要な文書が、作成から廃棄までの一生を通して適切に管理・統制されているかは、企業のガバナンスとコンプライアンスの根幹をなす要素です。しかし、多くの企業ではワークフローと文書管理のシステムが分断され、決裁後の文書が「野良ファイル」化しています。このような課題を解決するには、文書ライフサイクル全体をシームレスに管理できる統合型のワークフローシステムが不可欠です。

この課題を解決する一つのソリューションがジュガールワークフローです。ジュガールは、ワークフロー、文書管理、グループウェアの機能をネイティブに統合し、文書の作成から廃棄までの全ステージを完全に統制します。さらに、AIによる入力支援や規程チェック機能により、バックオフィス業務の知的生産性を飛躍的に向上させ、企業のガバナンス強化に貢献します。

7. DX推進指標に関するよくある質問(FAQ)

Q1:DX推進指標は、なぜ「点数」よりも「対話」が重要だと言われるのですか?

A1:DX推進指標は、単に自社の成熟度を点数化し、外部にアピールするためのものではありません。点数そのものに一喜一憂するのではなく、「なぜこの点数になったのか?」を経営層、事業部門、IT部門が同じテーブルについて議論し、認識のズレを解消することが目的です。この対話プロセスを通じて、全社的な課題が浮き彫りになり、真のDXに向けた具体的なアクションプランが生まれます。

Q2:自己診断を行う上で、最も重要な注意点は何ですか?

A2:最も重要なのは、「良い点を取ろうとしないこと」です。現状を過大評価して高い点数をつけても、現実との乖離が広がるだけで、本質的な課題解決にはつながりません。理想論ではなく、ありのままの現状を率直に診断し、その結果を真摯に受け止める姿勢が、変革の第一歩となります。

Q3:中小企業でもDX推進指標は活用できますか?

A3:はい、むしろ中小企業にこそ有用です。大企業に比べて専門人材やリソースが限られる中小企業は、DXへの取り組みが属人化し、何から手をつけてよいか分からないという状況に陥りがちです。DX推進指標は、そのような状況でも自社の現在地を客観的に把握し、経営戦略に沿った優先順位をつけるための羅針盤として機能します。

Q4:DX推進指標の結果を、人事評価に組み込むことは可能ですか?

A4:DX推進指標は、従業員の個別のパフォーマンスを評価するツールではありません。組織全体の成熟度を測るためのものです。個人の人事評価に直接組み込むことは、従業員が点数を上げることだけを目的とし、率直な現状分析や議論が阻害されるリスクがあります。DX推進指標は、あくまで組織変革を促進するためのツールとして活用すべきです。

Q5:DX推進指標で定義されている「データ活用」とは、具体的に何を指しますか?

A5:単にデータを集めるだけでなく、データを経営資源として捉え、ビジネスの意思決定に活かせる状態を指します。具体的には、データ品質が確保されているか、部門横断でデータを連携・活用できる仕組みがあるか、データ分析によって新たな顧客価値を創出できているか、といった点が評価対象となります。本記事で解説したデータガバナンスマスターデータ管理(MDM)は、このデータ活用を支える基盤となります。

8. 引用文献

  1. IPA 独立行政法人情報処理推進機構. 「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)概要版」. https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/tbl5kb0000007nt4-att/dx-suishin-report2024-gaiyou.pdf
  2. 経済産業省. 「DX推進指標(サマリー)」. https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/004_s04_00.pdf
  3. 株式会社チワワテクノロジーズ. 「DX推進の第一歩を踏み出す中小企業の皆様へ ~IPA「2024年版DX推進指標分析レポート」から見えた現実と希望~」. https://chihuahua-tech.com/2025/05/09/dx%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%81%AE%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AD%A9%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%99%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AE%E7%9A%86%E6%A7%98%E3%81%B8%E3%80%80%EF%BD%9Eipa/
  4. 一般社団法人全国スーパーマーケット協会. 「【経済産業省】「DX推進指標」」. https://www.super.or.jp/?p=11426
  5. Robo-Pat. 「DX推進指標とは?これを読めばわかる!目的や活用方法、ポイントなどを徹底解説」. https://fce-pat.co.jp/magazine/2751/
  6. IPA 独立行政法人情報処理推進機構. 「DX推進指標のご案内」. https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
  7. PERSOL(パーソル)グループ. 「DX推進指標とは?定義や活用方法を分かりやすく解説」. https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/9249/
  8. NTTドコモビジネス. 「DX推進ガイドラインやDX推進指標の活用の方法を紹介」. https://www.ntt.com/business/services/rink/knowledge/archive_37.html

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記事監修

川﨑 純平

VeBuIn株式会社 取締役 マーケティング責任者 (CMO)

元株式会社ライトオン代表取締役社長。申請者(店長)、承認者(部長)、業務担当者(経理/総務)、内部監査、IT責任者、社長まで、ワークフローのあらゆる立場を実務で経験。実体験に裏打ちされた知見を活かし、VeBuIn株式会社にてプロダクト戦略と本記事シリーズの編集を担当。現場の課題解決に繋がる実践的な情報を提供します。