ワークフローシステム講座

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【サンプル付】質の高い議事録の書き方|承認・管理までを効率化するDX手法とは

目次

この記事のポイント

  • 質の高い議事録は、情報共有・意思決定の根拠・行動促進・ナレッジ蓄積という4つの役割を持つ。
  • AIとワークフロー連携により、議事録作成の時間短縮、属人化防止、情報活用の高度化が可能。
  • DXのゴールは文書ライフサイクル全体の管理による議事録の「情報資産化」であり、ガバナンス強化にも直結。

1. 質の高い議事録とは?その本質と3つの構成要素

議事録は、単なる会議の記録ではありません。その本質は、組織の意思決定、情報共有、そして法的コンプライアンスを支える重要な戦略的資産です。質の高い議事録とは、会議の目的や性質に応じて、必要な情報が過不足なく、明確に、そして簡潔にまとめられた文書を指します。

この章では、質の高い議事録に不可欠な「目的」「種類」「構成要素」という3つの要素を解説します。

1-1. なぜ議事録を作成するのか?戦略的な目的

議事録作成の目的を理解することは、その内容や詳細レベルを決定する上で非常に重要です。議事録は主に以下の4つの役割を担います。

  • 情報共有と認識合わせ: 議事録は、参加者だけでなく、会議を欠席したメンバーや後からプロジェクトに関わる人々に議論の内容を正確に伝え、組織全体の認識を統一します。
  • 意思決定の根拠の明確化: 会議で決定された事項が、どのような議論や発言を経て確定したのかを客観的に示します。これにより、決定の背景が明確になり、関係者の納得感を醸成し、コミットメントを高めます。
  • 行動と説明責任の促進: 誰が、何を、いつまでに行うのかを明記することで、責任の所在が明確になり、行動の遅延や抜け漏れを防ぐための基礎資料となります。
  • ナレッジマネジメント: 議事録は、議論の過程で生まれた知見や背景情報を組織の知識資産として保存します。これにより、担当者の異動や退職があっても業務の継続性が保たれます。

1-2. 会議の目的に応じた議事録の種類

すべての会議に同じフォーマットの議事録は必要ありません。会議の性質に応じて最適な形式を選択することが、質の高い議事録を作成するための第一歩です。

議事録の種類主な目的適した会議の例
簡略議事録迅速な情報共有とフォローアップ日常的な社内ミーティング、進捗確認会議
詳細議事録議論の経緯や背景の網羅的な記録公式な会議、重要な戦略策定会議
決議議事録法的・公式な意思決定の記録取締役会、株主総会
プロジェクト議事録プロジェクトの進捗管理と課題追跡プロジェクト進捗会議

1-3. 議事録の普遍的な構成要素

どのような種類の議事録であっても、その明瞭性と実用性を保証するために、以下の共通した構成要素を含める必要があります。

  • ヘッダー情報: 会議名、日時、場所、参加者(出席者・欠席者)を記載します。
  • 議題と目的: 会議の目的や議題を冒頭に明記し、読み手が会議の全体像を即座に理解できるようにします。
  • 決定事項: 会議で合意・決定された事項を、誰が読んでも誤解のないよう、明確かつ簡潔にリストアップします。
  • アクションアイテム(ToDoリスト): 「誰が (Who)」「何を (What)」「いつまでに (When)」行うのかを5W1Hのフレームワークに沿って記述し、責任と期限を明確にします。
  • 議事内容(議論の要旨): 各議題に関する主要な議論のポイントや、決定に至った背景などを要約して記述します。

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  • 業務の属人化はなぜ問題?AI時代のナレッジ共有とワークフロー活用術
  • 読むべき理由: 議事録作成の属人化は、ノウハウ喪失や業務停滞といったリスクに直結します。本記事と合わせて読むことで、議事録を組織のナレッジとして共有する重要性が深く理解できます。

2. 手動での議事録作成:卓越性を生む3フェーズ・プロセス

ここでは、高度なテクノロジーに頼らず、人間のスキルを最大限に活用して優れた議事録を作成するための3つのフェーズを解説します。議事録作成は、単にタイピングの速さで決まるのではなく、プロセス全体の結果です。

2-1. フェーズ1:会議前の準備(品質の基盤)

議事録作成の成否は、会議が始まる前に大部分が決まります。

  • アジェンダ分析: 各議題の背後にある「なぜ」を深く理解し、議論の核心となるポイントを予測することで、能動的に情報を捉える準備ができます。
  • テンプレートの準備: 会議の種類に応じたテンプレートを事前に準備し、基本情報を記入しておきます。これにより、会議中は内容の記録に全神経を集中させることが可能です。

2-2. フェーズ2:会議中の実行(能動的な情報捕捉の技術)

リアルタイムで情報を記録するこのフェーズでは、高度な傾聴力と構造化されたメモ取り技術が求められます。

  • 結論・決定事項の優先: 目的は逐語記録ではなく、決定事項とその論理的根拠を記録することです。何よりもまず「結論・決定事項」を最優先で記録しましょう。
  • 5W1H/5W2Hフレームワークの活用: アクションアイテムを記録する際は、「誰が(Who)」「何を (What)」「いつまでに (When)」「どのように (How)」などを意識的に聞き取り、明確性を確保します。
  • 事実と意見の区別: 客観性を保つため、事実については断定的な表現を、意見については「〜と考える」といった形で区別して記録します。

2-3. フェーズ3:会議後の仕上げ(推敲と配布)

会議中に取ったメモを、明瞭でプロフェッショナルな文書へと昇華させる最終フェーズです。

  • 即時着手: 会議の記憶が鮮明なうちに、議事録の編集と最終化に取り掛かります。理想的には会議後24時間以内に完了させましょう。
  • 明瞭性のための編集: 話し言葉を書き言葉に変換し、「これ」「それ」といった曖昧な指示代名詞を具体的な名詞に置き換えます。
  • レビューとフィードバック: 最終的な配布の前に、議長などの主要な参加者にドラフトを確認してもらい、内容の正確性を検証します。

<まとめ>手動による議事録作成プロセスのポイント

フェーズ目的主要なアクション
会議前準備と予測アジェンダ分析、テンプレート準備、背景情報調査
会議中能動的な記録決定事項の優先、5W1H、事実と意見の区別、効率的なメモ取り
会議後仕上げと共有即時着手、編集、レビュー、フィードバック、配布

3. 【サンプル付】議事録作成を効率化するテンプレート

テンプレートを活用することで、議事録作成の時間を劇的に短縮し、品質と一貫性を向上させることができます。ここでは、目的に応じたサンプルテンプレートを紹介します。

テンプレート:プロジェクト進捗報告会議用(例)

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【議事録】〇〇プロジェクト進捗報告会議

■開催日時:YYYY年MM月DD日(〇) HH:MM – HH:MM
■開催場所:オンライン会議(ツール名:〇〇)
■参加者:
 (出席者)
  ・氏名A(部署名)
  ・氏名B(部署名)
  ・氏名C(部署名)
 (欠席者)
  ・氏名D(部署名)

■議題:
1. 先週のアクションアイテム進捗確認
2. 〇〇機能の開発状況と課題
3. 次期マイルストーンの確認

■議事内容:
(議題1)先週のアクションアイテム進捗確認
* 氏名Aより、タスク「〇〇」は完了済みである旨の報告。
* 氏名Cより、タスク「△△」は一部遅延している旨の報告。原因は他部署との連携遅れ。

(議題2)〇〇機能の開発状況と課題
* 開発チームより、〇〇機能の基本設計が完了した旨を報告。
* 課題として、[課題内容]が挙がる。解決策として[解決策]が提案される。
* 氏名Bより、[別の意見]が提示される。

■決定事項:
1. 〇〇機能の仕様について、[決定事項内容]で最終決定。
2. 氏名Aが担当するマーケティング資料の作成は、今週金曜日を期限とする。
3. 氏名Cが担当する他部署への確認は、本日中に行う。

■アクションアイテム(次回の会議までに実施):
氏名A: 〇〇機能のマーケティング資料を作成する。 (期限: YYYY年MM月DD日)
氏名C: △△の遅延原因について、他部署と連携し具体的な改善策を報告する。 (期限: 次回会議)
* **全員: 次期マイルストーン達成に向けた各自の担当タスクを再確認する。

■次回開催日時:YYYY年MM月DD日(〇) HH:MM –
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<まとめ>テンプレート作成・管理ツールの比較

ツール主な強み最適な用途
Microsoft Wordプロフェッショナルな書式設定、普遍的な互換性フォーマルな報告書、取締役会議事録
Microsoft Excel構造化データ、タスク追跡、数値情報プロジェクト進捗報告、指標を含む会議
Google Docs優れたリアルタイム共同編集、クラウドアクセス複数人でのライブ議事録作成、リモートチーム
OneNote / Evernote柔軟なノートテイキング、マルチメディア統合ブレインストーミング、個人的なメモ

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4. 議事録作成のDX手法:AIとワークフローによる変革

手動による議事録作成のスキルは重要ですが、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって、そのプロセスは劇的に効率化されます。特に、AIによる自動化ワークフロー連携がその核となります。

4-1. 非効率な手動プロセスの課題

  • 時間的コスト: 会議時間の3〜5倍の作業時間が必要になることもあり、作成者の大きな負担となります。
  • 情報のサイロ化: 個人のPCやメールに保存された議事録は、横断的な検索が難しく、組織の貴重なナレッジが失われる原因になります。
  • プロセスのボトルネック: 手作業での承認依頼や共有プロセスは遅延が発生しやすく、会議後のアクションが停滞します。

4-2. DXによる具体的な効果

DXを推進することで、以下のような定量的なメリットが期待できます。

  • コスト削減: NECの試算では、従業員10名が参加する会議を1時間短縮できれば、25,000円の人件費を削減できると報告されています。
  • 時間短縮: 岡山県庁の事例では、AI音声文字起こしツールの導入により、議事録作成時間が約5割削減されたとの報告があります。
  • 生産性向上: 議事録DXを含む一連の施策により、年間で数千時間の工数削減を実現した企業もあります。

4-3. 議事録DXの中核となる技術

AIが議事録作成の質とスピードを飛躍的に高める一方で、その**「判断」の最終的な責任は人間が負うという原則は変わりません。AIが生成した情報が、事実に基づいているか、会社のルールに適合しているかを検証するプロセスが不可欠です。このプロセスを効率化し、形骸化させないための鍵がワークフロー**です。

技術概要価値
AIによる自動化AIが音声から文字起こしを行い、要約やタスクを自動で抽出します。手作業の文字起こしや要約作業を不要にし、作成時間を大幅に短縮します。
クラウドによる一元管理クラウドプラットフォーム上で議事録を一元管理し、いつでもどこからでもアクセス可能にします。情報のサイロ化を防ぎ、強力な検索機能により必要な情報がすぐに見つかります。
ワークフロー連携議事録を承認・管理するワークフローを自動化し、他の業務システムと連携します。承認プロセスのボトルネックを解消し、決定事項がタスク管理ツールなどに自動で反映されます。

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5. DXの最終ゴール:議事録を「情報資産」へと変える

DXの最終的なゴールは、単に文書作成を自動化することではありません。それは、議事録の文書ライフサイクル全体を管理し、非構造化データである「会話」を、ビジネスを前進させる**「情報資産」**へと変換することにあります。

5-1. ワークフローで管理する文書ライフサイクル

文書ライフサイクル管理とは?ワークフローで実現する堅牢な内部統制システム構築ガイド」でも解説されているように、文書の価値を最大化するには、その一生(ライフサイクル)を一貫して管理する必要があります。従来のシステムは、以下の5つのステージの一部しかカバーできていませんでした。

ステージ概要DXによる効果
作成文書のドラフトを作成し、情報を入力する段階。テンプレートやAIによる入力支援で、手戻りを削減します。
処理定められた承認ルートに従って、レビューや決裁を行う段階。承認ルートの自動化とAIによる規程チェックで、迅速かつ正確な意思決定を支援します。
保管決裁後の文書を、検索・閲覧可能な状態で共有・活用する段階。決裁と同時に自動ファイリングされ、全文検索で必要な情報がすぐに見つかります。
保存法令に基づき、改ざん不可能な状態で証跡として保持する段階。文書ごとに最適な保存期間が自動適用され、法令遵守を自動化します。
廃棄保存期間が満了した文書を、安全に処分する段階。廃棄対象の自動通知と承認フローで、廃棄漏れや誤廃棄を防ぎます。

<まとめ>DXによって変わる議事録の価値

従来DX後
単なる記録戦略的な情報資産
作成者の負担業務の効率化
共有の手間連携による自動化
活用の困難さ分析による洞察(インサイト)

5-2. AI時代の盲点:「ガーベージイン、ガーベージアウト」の罠

AIによる議事録自動化の進展は目覚ましいものがありますが、忘れてはならないのが「ガーベージイン、ガーベージアウト(GIGO)」という原則です。AIは学習したデータに基づいて回答を生成するため、不正確な情報(ゴミ)を入力すれば、誤った結論(ゴミ)が出力されます。

AIによる自動文字起こしや要約は非常に便利ですが、

  • 発言者の早口や不明瞭な発言による文字起こしの誤り
  • AIが文脈を誤解したことによる要約のニュアンスのずれ

といった問題は依然として発生します。

これを防ぐためには、AIが生成した議事録を、人間が最終的に確認・承認するワークフローが不可欠です。このプロセスは、単なる形式的なものではなく、以下の2つの重要な役割を担います。

  1. 品質管理: AIによる不備を参加者全員でチェックし、正確性を担保することで、議事録の品質を安定させます。
  2. 責任の明確化: 最終承認のプロセスを経ることで、議事録の内容に対する合意形成がなされ、後の「言った言わない」問題や責任の所在の不明確さを解消します。

AIはあくまで強力な「下書き作成ツール」であり、そのアウトプットを検証し、最終的な文書として完成させる責任は人間にあります。ワークフローは、この**「AIと人間の協業」を円滑にし、ガバナンスを確保するための土台**となるのです。

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6. まとめ:ジュガールワークフローによる議事録DXの実現

本記事で見てきたように、議事録の作成から承認・管理までを効率化するDX手法は、単なるツールの導入に留まりません。それは、文書のライフサイクル全体を一つのプラットフォームでシームレスに連携させ、「会話」という非構造化データを「情報資産」へと変革させることです。

この「プロセスとアーカイブの断絶」という市場の課題を解決するのが、ジュガールワークフローです。ジュガールワークフローは、ワークフローと文書管理機能をネイティブに統合し、文書の作成から廃棄までを完全に統制します。また、社内のルール文書や過去のデータを学習したエージェントAIが、入力支援や規程チェックを自動で行うことで、従業員を単純作業から解放し、より戦略的な業務に集中できる環境を提供します。ジュガールワークフローは、議事録DXを成功させるための強力な基盤となるでしょう。

7. よくある質問(FAQ)

Q1: AI議事録は完璧ですか?

A1: 非常に高い精度を誇りますが、完璧ではありません。録音環境(ノイズや複数人の同時発話)や専門用語の有無によっては、文字起こしに誤りが発生する可能性があります。そのため、AIが作成した議事録は、必ず人間の目で最終的な確認と修正を行うことが不可欠です。

Q2: 議事録DXは、どの部署から始めるべき?

A2: まずは、経営会議やプロジェクト進捗会議など、業務プロセスの可視化と意思決定の迅速化が求められる会議から始めることをお勧めします。小さな成功体験を積み重ねることで、全社的なDX推進への機運を高めることができます。

Q3: AIが作成した議事録に責任はありますか?

A3: AIはあくまでツールであり、そのアウトプットを利用した結果に対する最終的な責任は人間が負います。そのため、AIが作成した議事録の内容を参加者が確認・承認するワークフローを導入し、責任の所在を明確にしておくことが重要です。

Q4: 議事録DXを進めるにあたり、参加者側は何か気をつけることはありますか?

A4: AIの文字起こし精度を最大限に引き出すため、以下の点を心がけると効果的です。
・一度に一人ずつ話す。
・発言前に名前を名乗る。
・マイクに近づいて、はっきりと話す。
・専門用語や固有名詞を明確に発音する。

9. 引用文献

  1. 「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」提供者:国税庁 URL:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
  2. 「DX白書2023」提供者:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)URL:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html
  3. 「金融商品取引法と内部統制」提供者:金融庁URL:https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/naibu/20100521/01.pdf

川崎さん画像

記事監修

川﨑 純平

VeBuIn株式会社 取締役 マーケティング責任者 (CMO)

元株式会社ライトオン代表取締役社長。申請者(店長)、承認者(部長)、業務担当者(経理/総務)、内部監査、IT責任者、社長まで、ワークフローのあらゆる立場を実務で経験。実体験に裏打ちされた知見を活かし、VeBuIn株式会社にてプロダクト戦略と本記事シリーズの編集を担当。現場の課題解決に繋がる実践的な情報を提供します。