法定保存文書の一覧【2025年最新版】|会社法・税法で定められた書類の保存期間まとめ

目次

この記事のポイント

  • 電子帳簿保存法の義務化や労働基準法の改正など、2025年現在の最新動向が企業の文書管理に与える具体的な影響。
  • 会社法、法人税法、労働関連法が、それぞれなぜ文書の保存を義務付けているのかという法的背景とリスク。
  • 複数の法律で保存期間が定められている場合に、どの期間を適用すべきかという明確なルール。
  • 紙と電子、それぞれの媒体で法定保存期間を管理する上での具体的な難しさと、それに伴うリスク。
  • 法令を遵守し、かつ業務効率を向上させるための統制型文書管理基盤の重要性。

はじめに:なぜ今、文書管理が企業の生命線なのか?

企業活動において日々作成・受領される膨大な書類。これらの文書管理は、単なるファイリングといった事務作業にとどまらず、企業のコンプライアンス体制とリスク管理能力そのものを測る重要な指標となっています。税務調査、労務トラブル、訴訟といった有事の際に、適切な文書管理は企業を守る「盾」として機能します。逆に、管理を怠れば、法的な制裁や経済的な損失、さらには社会的信用の失墜といった深刻な事態を招きかねません。

2025年現在、この文書管理の重要性は、かつてないほど高まっています。その背景には、総務・内部監査の責任者として決して無視できない2つの大きなトレンドが存在します。

無視できない2つのトレンド:「電子帳簿保存法」と「労働関連法」

第一に、電子帳簿保存法の本格始動です。2024年1月1日から、電子メールやクラウドサービスを介して授受した請求書や領収書などの「電子取引データ」を、電子データのまま保存することが全事業者に対して完全に義務化されました。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が、企業の根幹である経理・会計業務のあり方を根本から変革することを意味します。

第二に、労働関連法の過渡期です。2020年の法改正により、労働基準法が定める労働関係書類の保存期間は原則として「5年」に延長されました。しかし、企業の準備期間を考慮し、「当分の間は3年」とする経過措置が現在も続いています。この「当分の間」がいつ終了するかは明示されておらず、多くの企業が対応に苦慮しています。

文書管理で遵守すべき2つの鉄則

これらの複雑な法規制に適切に対応するためには、文書管理における2つの基本原則を理解することが不可欠です。

  1. 起算日の正確な理解: 保存期間のカウントを開始する日、すなわち「起算日」は、書類の種類や根拠となる法律によって大きく異なります。この起算日を誤ると、意図せず法令違反を犯すリスクがあります。
  2. 複数法律が競合する場合の鉄則: 同じ一つの書類に対して、複数の法律が異なる保存期間を定めているケースは少なくありません。この場合の絶対的なルールは、**「最も長い期間を適用する」**ことです。この原則に従えば、短い期間に合わせてしまったために他の法律に違反するというリスクを完全に排除できます。

本記事では、これら2025年現在の最新動向と基本原則を踏まえ、企業が保存すべき文書の種類、期間、そしてその期間を確実に遵守するための方法を網羅的かつ実践的に解説します。

第1章:主要法令別・法定保存文書の徹底分析

企業の文書保存義務は、主に「会社法」「法人税法」「労働関連法」という3つの大きな法的枠組みによって規定されています。それぞれが異なる目的と視点から文書の保存を求めており、企業はこれらの要求を横断的に理解し、遵守する必要があります。

1-1. 会社法:コーポレート・ガバナンスの礎

なぜ会社法は文書保存を義務付けるのか?

会社法が定める文書保存義務の根底にあるのは、健全なコーポレート・ガバナンスの維持と、株主や債権者といったステークホルダーの保護です。取締役会議事録や会計帳簿といった書類は、会社の重要な意思決定の過程と財産の状況を証明する根源的な証拠となります。

例えば、経営判断の失敗によって会社に損害が生じた場合、株主が経営陣の責任を追及する「株主代表訴訟」が起こされる可能性があります。この訴訟の時効は10年であり、その際に「取締役が適切な情報に基づいて、善管注意義務を果たして意思決定を行ったか」を証明する客観的な証拠となるのが、まさに取締役会議事録や関連資料なのです。これらの文書が適切に保存されていなければ、企業は自らの正当性を証明できず、多額の損害賠償責任を負うリスクに直面します。

会社法が定める保存義務(10年保存)

文書分類具体的な文書例起算日備考
会計帳簿および関連資料・総勘定元帳、仕訳帳・現金出納帳、売掛金元帳など会計帳簿の閉鎖の時法人税法では7年だが、会社法の10年が優先される。
計算書類および附属明細書・貸借対照表、損益計算書・株主資本等変動計算書など作成された日企業の財産状況を示す決算報告書。
議事録類・株主総会議事録・取締役会議事録・監査役会議事録など会議が開催された日本店に10年、支店には謄本を5年間備え置く義務がある。
事業に関する重要資料・契約書・許認可関連書類契約の有効期間満了後など会社の権利義務関係を証明する重要書類。

会社法が定める保存義務(5年保存)

文書分類具体的な文書例起算日
事業報告関連・事業報告・会計監査報告・会計参与報告定時株主総会の1週間前の日(取締役会設置会社の場合は2週間前の日)など、書類により異なる。

1-2. 法人税法:税務調査の「盾」となる書類

なぜ法人税法は文書保存を義務付けるのか?

法人税法が文書保存を義務付ける最大の理由は、税務調査への備えです。税務調査とは、企業が申告した所得や税額が正しいかどうかを、税務署が検証する手続きです。この調査において、帳簿や請求書、領収書といった書類は、取引の事実や経費の正当性を証明するための唯一の客観的な証拠となります。

もし、経費の根拠となる領収書が保存されていなければ、その経費は否認され、結果として所得金額が増加し、多額の追徴課税や延滞税、場合によっては過少申告加算税といったペナルティが課されることになります。つまり、法人税法が定める文書保存は、企業の資産を守るための重要な「盾」なのです。

法人税法が定める保存義務(原則7年)

文書分類具体的な文書例起算日
帳簿・総勘定元帳、仕訳帳・現金出納帳、固定資産台帳などその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日
書類(証憑書類)・決算関係書類・注文書、契約書、送り状・領収書、請求書、見積書などその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日

【重要例外】欠損金がある場合の「10年保存」ルール

原則7年保存というルールには、すべての事業者が認識しておくべき極めて重要な例外があります。それは、事業年度において赤字、すなわち欠損金が生じた場合の扱いです。

青色申告法人が、その欠損金を翌期以降の黒字と相殺できる「繰越控除」の制度を利用する場合、その欠損金が生じた事業年度の帳簿書類の保存期間は7年から10年に延長されます。(※平成30年4月1日より前に開始した事業年度の欠損金は9年)

1-3. 労働関連法:従業員との信頼を守る

なぜ労働関連法は文書保存を義務付けるのか?

労働関連法が文書保存を義務付けるのは、従業員の権利を保護し、労使間のトラブルを公正に解決するためです。未払い残業代の請求、不当解雇を巡る争い、労働災害の認定など、労務問題が発生した際に、タイムカードや雇用契約書、賃金台帳は、労働条件や労働実態を客観的に示す動かぬ証拠となります。

例えば、従業員から「残業代が支払われていない」と訴えられた場合、企業側はタイムカードなどの客観的な記録に基づき、労働時間とそれに対応する賃金が適正に支払われていたことを証明する必要があります。これらの記録がなければ、企業は反論の手段を失い、従業員側の主張が認められてしまう可能性が高まります。文書保存は、従業員との信頼関係の基盤であり、企業自身を不測の紛争から守るための防波堤なのです。

原則「5年」、経過措置「3年」のジレンマ

2020年4月の労働基準法改正により、労働関係の重要書類の保存期間は、従来の3年から原則5年に延長されました。しかし、企業の急な負担増を避けるため、「当分の間は3年間」とする経過措置が設けられています。

この「当分の間」がいつ終了するかは未定であり、この法的なあいまいさは企業にとってコンプライアンス上の「罠」となり得ます。3年で廃棄した場合、後に従業員から5年の時効に基づく請求をされた際、会社側が証拠を提示できず、不利な状況に陥るリスクがあります。したがって、社内規定としては今すぐ「5年保存」を標準とすることを強く推奨します。

労働基準法が定める保存義務(原則5年/当面3年)

文書分類具体的な文書例起算日備考
法定三帳簿・労働者名簿・賃金台帳・出勤簿・労働者の死亡、退職又は解雇の日・最後の賃金について記入した日・最後の出勤日賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねる場合は税法の7年保存が優先。
雇用・退職関連・雇用契約書、労働条件通知書・解雇通知書、退職届労働者の退職又は死亡の日採用選考に関する書類(履歴書等)は法的な保存義務はないが、トラブル防止のため保存が望ましい。
労働時間関連・タイムカード、PCログ記録・残業命令書、報告書労働関係に関する重要書類として、賃金台帳等の起算日に準ずる。客観的な労働時間の記録として重要。
その他・36協定書・災害補償に関する書類協定の有効期間の満了後協定書は届出の控えだけでなく、事業場に備え付け、労働者に周知する義務もある。

その他の法律に基づく長期保存義務

保存期間文書名根拠法起算日備考
40年石綿(アスベスト)健康診断個人票労働安全衛生法作成日健康被害が数十年後に現れるため、極めて長期の保存が義務付けられている。
30年特定化学物質等健康診断個人票労働安全衛生法作成日ベンゼン等、特に有害性が高い物質が対象。
7年電離放射線健康診断個人票労働安全衛生法作成日放射線業務従事者が対象。
5年・一般健康診断個人票・有機溶剤、鉛等の健康診断個人票労働安全衛生法作成日最も一般的な健康診断の結果。
4年雇用保険の被保険者に関する書類雇用保険法従業員の退職・死亡など完結の日資格取得確認通知書、離職票など。
2年健康保険・厚生年金保険に関する書類健康保険法等完結の日資格取得・喪失確認通知書など。

【第1章のまとめ】主要法令の比較

法令なぜ保存が必要か?(目的)主な対象文書保存期間のポイント
会社法ガバナンス維持ステークホルダー保護(株主代表訴訟などへの備え)・会計帳簿、計算書類<br>・各種議事録、契約書10年が基本。企業の根幹をなす重要書類が対象。
法人税法税務調査への備え(取引の正当性の証明)・帳簿全般<br>・請求書、領収書など取引書類原則7年。ただし欠損金(赤字)年度は10年に延長される点に要注意。
労働関連法従業員の権利保護労使トラブルへの備え・法定三帳簿<br>・雇用契約書、タイムカード原則5年(当面3年の経過措置あり)。リスク回避のため5年保存での運用を推奨。

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第2章:電子保存の2大法則:e-文書法と電子帳簿保存法

法定保存文書を電子的に保存する際、必ず理解しておくべき2つの重要な法律があります。それが「e-文書法」と「電子帳簿保存法」です。この2つの法律の関係性を正しく理解することが、適切なコンプライアンス対応の第一歩となります。

2-1. すべての基本となる「e-文書法」

e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)は、その名の通り、法律で保存が義務付けられている幅広い文書(会社法、税法、労働法などに基づく書類)について、紙だけでなく電子データでの保存を認めるための基本的なルールを定めた法律です。

e-文書法が求めるのは、電子データが紙の文書と同等の信頼性を保つための、以下の4つの基本的な要件です。

要件内容紙の管理に例えると…
見読性PC等で明瞭に表示・印刷できること。汚れやかすれなく、誰でも読める状態でファイリングすること。
完全性保存期間中、情報が破壊・改ざんされないこと。決裁印を押し、鍵付きのキャビネットで不正な書き換えを防ぐこと。
機密性許可なくアクセス・漏洩されないこと。機密書類を、権限のある人しか入れない部屋で保管すること。
検索性必要な情報を速やかに探し出せること。取引先別・日付順に整理し、管理台帳で場所を管理すること。

2-2. 国税関係書類の特別ルール「電子帳簿保存法」

電子帳簿保存法は、e-文書法が定める大きな枠組みの中で、特に国税関係の帳簿・書類(法人税法などで保存が義務付けられている書類)に特化した、**より詳細で具体的なルールを定めた「特別法」**です。

法律の世界では、広い範囲を対象とする「一般法」(e-文書法)と、特定の分野を対象とする「特別法」(電子帳簿保存法)がある場合、「特別法」が優先して適用されます。したがって、請求書や領収書といった国税関係書類の電子保存においては、私たちは電子帳簿保存法の要件を遵守する必要があるのです。

【第2章のまとめ】電子保存に関する法律の比較

法律目的対象文書主なポイント
e-文書法様々な法律で保存が義務付けられた文書の電子化を容認するための基本法。会社法、税法、労働法などに基づく幅広い法定保存文書。電子保存の基本4要件(見読性、完全性、機密性、検索性)を定めている。一般法の位置づけ。
電子帳簿保存法国税関係書類の電子保存について、具体的な要件を定めるための法律。法人税法などで保存が義務付けられた帳簿・書類(請求書、領収書など)。e-文書法の要件を、税務調査の観点からより厳格化・具体化したもの。特別法の位置づけ。

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第3章:保存期間管理の難しさ:紙と電子のそれぞれの「落とし穴」

法定保存期間を「知っている」ことと、それを組織として「確実に守り続ける」ことの間には、大きな隔たりがあります。ここでは、文書管理の現場が直面する、紙と電子それぞれの管理の難しさと、その本質的な解決策について解説します。

3-1. 紙媒体での管理:属人化と形骸化のリスク

一見シンプルに見える紙のファイリングですが、厳格な期間管理を行おうとすると、多くの課題に直面します。

  • 物理的な限界: 書庫のスペースには限りがあり、保管コストは増大し続けます。また、火災や水害、経年劣化による物理的な消失リスクは避けられません。
  • 台帳管理の形骸化: Excel等での管理台帳は、入力ミスや更新漏れが頻発します。担当者の異動や退職によって管理ルールが引き継がれず、台帳が「ブラックボックス化」するケースは後を絶ちません。
  • 廃棄プロセスの重い負担: 定期的な棚卸しと廃棄対象リストの作成には、膨大な時間と労力がかかります。この負担の大きさから、本来廃棄すべき書類が「とりあえず保管」という名目で放置され、情報漏洩のリスクを高める結果につながります。

3-2. 電子管理の罠:ファイルサーバーは「無法地帯」になりやすい

ペーパーレス化を目指してファイルサーバーを導入しても、それだけでは根本的な解決にはなりません。むしろ、新たなリスクを生む可能性があります。

  • 利便性の裏にある統制の欠如: ファイルは誰でも簡単にコピー、変更、削除、共有(メール添付など)ができてしまいます。この「利便性」は、裏を返せば統制が効かないことを意味します。
  • 改ざん・隠蔽のリスク: 誰がいつファイルを変更したのか、あるいは削除したのかを正確に追跡することが困難です。悪意があれば、不正なデータの捏造や改ざん、不都合な証拠の隠蔽も容易に行えてしまいます。
  • 情報漏洩のリスク: 重要な情報を含むファイルが、誤送信や不正な持ち出しによって外部に流出するリスクが常に付きまといます。
  • 「非改ざん証明」の困難さ: 訴訟や監査の際に、「そのファイルが、保存されるべき期間中、一切変更されていないこと」を客観的に証明することが極めて困難です。これは、電子データの証拠能力における致命的な弱点となります。

3-3. 本質的な解決策:文書ライフサイクル全体を統制する管理基盤

紙と電子、双方の課題を解決するためには、文書が「作成」される瞬間から、承認「処理」を経て、「保管」「保存」され、最終的に「廃棄」されるまでの一連の流れ(=文書ライフサイクル)を、一つのシステム上で一元的に管理・統制するアプローチが不可欠です。

ファイルサーバーのような単なる「箱」ではなく、**統制型の文書管理基盤(ワークフローシステムなど)**を導入することで、以下のような真のコンプライアンス遵守と業務効率化が実現できます。

課題統制型文書管理基盤による解決策
誤廃棄・廃棄漏れ文書の種類に応じて保存期間を自動で設定。期間満了をシステムが自動通知し、承認プロセスを経て安全に廃棄する。
改ざん・情報漏洩厳格なアクセス権限設定と、いつ・誰が・何をしたかという操作ログの完全な記録により、不正な操作を防止・追跡する。
非改ざん証明保存期間中は編集・削除をロックする「レコードマネジメント機能」やタイムスタンプにより、データの完全性を法的に証明する。
管理の属人化担当者のスキルに依存せず、システムがルール通りに運用を強制するため、業務品質が標準化され、引き継ぎも容易になる。

【第3章のまとめ】

保存期間の管理は、紙では属人化と形骸化、安易な電子化では統制の欠如と改ざんリスクという、それぞれ深刻な課題を抱えています。これらの本質的な解決には、文書のライフサイクル全体を一元的に管理・統制できる専用のシステム基盤の導入が不可欠です。

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第4章:実践的文書管理フレームワーク

法令の要件を理解した上で、次に必要となるのは、それらを日々の業務に落とし込むための実践的な管理体制です。

4-1. 【保存版】保存期間別・法定保存文書マスターリスト

これまでの情報を集約し、企業の担当者が日常業務で参照できるよう、主要な法定保存文書を保存期間別に整理したマスターリストです。

保存期間文書名主な根拠法起算日
永久保存定款、登記関係書類、株主名簿、知的財産権に関する書類など会社法等(実務上の推奨)
10年会計帳簿計算書類、各種議事録欠損金が生じた事業年度の帳簿書類・営業に関する図書(建設業)会社法法人税法 建設業法・会計帳簿の閉鎖の時・確定申告提出期限の翌日・工事目的物の引渡し日
7年・取引に関する帳簿・書類(請求書、領収書等)・源泉徴収簿法人税法国税通則法・確定申告提出期限の翌日・法定申告期限の属する年の翌年1月10日の翌日
5年労働基準法上の重要書類(労働者名簿、賃金台帳、タイムカード等)・事業報告、会計監査報告・一般健康診断個人票・産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し労働基準法 会社法労働安全衛生法 廃棄物処理法・従業員の退職日等・定時株主総会の1週間前等・作成日・写しの送付を受けた日
4年雇用保険の被保険者に関する書類雇用保険法従業員の退職・死亡など完結の日
3年・安全衛生委員会議事録・労災保険に関する書類・個人データの第三者提供に係る記録労働安全衛生法 労災保険法 個人情報保護法・開催日・完結の日・記録の作成日
2年健康保険・厚生年金保険に関する書類健康保険法等完結の日

※注意:複数の法律が関わる場合、最も長い保存期間を適用してください。

4-2. 業種特有の保存義務:建設業等を例に

全業種共通の義務に加え、建設業法、製造物責任(PL)法、関税法など、特定の業種には追加の書類保存義務が課せられています。自社の事業に関連する業法を個別に確認することが重要です。

4-3. 個人情報保護法との連携

法定保存文書の多くは個人情報を含みます。したがって、文書管理は個人情報保護法の遵守と不可分です。

  • 安全管理措置: 保存期間中、アクセス制御や施錠管理など、適切な安全管理措置を講じる義務があります。
  • 保存期間経過後の廃棄: 利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく安全に消去することが求められます。

4-4. 堅牢な文書管理体制の構築

法令遵守を確実にし、業務効率を高めるためには、体系的な文書管理体制が不可欠です。

  1. 文書管理規程の策定: 社内の公式ルールとして、対象文書、保存期間、保存方法、管理責任者、廃棄手順などを明確に定めます。
  2. 分類と整理: 「案件ごと」「日付順」「保存期間別」といったルールで分類・整理し、検索性と廃棄作業の効率を高めます。
  3. 安全な廃棄プロセスの確立: 保存期間が満了した文書は、シュレッダーや機密文書溶解サービスを利用し、復元不可能な形で安全に廃棄します。

結論:未来を見据えた戦略的文書管理へ

2025年現在、企業に求められる文書管理は、もはや過去の記録を単に「保存」しておく受動的な業務ではありません。法改正の波を乗りこなし、潜在的なリスクを予見し、経営資源を最適化するための、能動的かつ戦略的な活動へと進化しています。

本記事で提示した、以下の4つの戦略的アプローチを組織の文書管理ポリシーに組み込むことが、コンプライアンスを確保し、企業を不要なリスクから守るための鍵となります。

  • 最長期間ルールの適用: 複数の法律が関わる場合は、必ず最も長い期間を採用する。
  • 欠損金年度の10年保存: 欠損金の繰越控除を適用した年度の記録は、例外なく10年間保存する。
  • 労働関係書類の5年保存への先行対応: 経過措置に依存せず、社内ルールを「5年保存」に統一する。
  • 電子保存の法的要件の遵守: e-文書法と電子帳簿保存法を正しく理解し、適切なシステムで対応する。

このような複雑で多岐にわたる法定保存文書の管理は、ヒューマンエラーのリスクも高く、担当者にとって大きな負担です。文書の発生から廃棄までのライフサイクル全体を考慮し、管理を自動化することが、最も確実で効率的な解決策と言えるでしょう。

ジュガールワークフローのような統合型ワークフローシステムは、まさにこの課題を解決するために設計されています。文書の種類に応じた保存期間の自動設定や、電子帳簿保存法が求める検索要件への対応、さらには承認を経た安全な廃棄プロセスまでを、一つのプラットフォーム上で一元的に管理。これにより、担当者の負担を劇的に削減し、ヒューマンエラーを根絶して、堅牢なコンプライアンス体制の構築を支援します。日々の定型業務から解放され、未来を創るための時間を生み出すために、理想のワークフローシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

引用・参考文献

  1. 金融庁. 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」 URL: https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/kijun/20191206_naibutousei_kansa.pdf
  2. 国税庁. 「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
  3. 厚生労働省. 「労働基準法関係法令の改正状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoujouken/index.html
  4. 個人情報保護委員会. 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
  5. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA). 「DX白書2023」         https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-hakusho2023.html

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記事監修

川﨑 純平

VeBuIn株式会社 取締役 マーケティング責任者 (CMO)

元株式会社ライトオン代表取締役社長。申請者(店長)、承認者(部長)、業務担当者(経理/総務)、内部監査、IT責任者、社長まで、ワークフローのあらゆる立場を実務で経験。実体験に裏打ちされた知見を活かし、VeBuIn株式会社にてプロダクト戦略と本記事シリーズの編集を担当。現場の課題解決に繋がる実践的な情報を提供します。

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