この記事のポイント
- DXの成功事例ではなく、現場でよく起きている「業務シーンの変わり方」に焦点を当てている
- 営業・現場・管理部門それぞれで、属人化・後回し・分断といった共通課題が構造的に起きている
- 業務アプリ化は「全社DX」ではなく、できそうな一業務から始めるのが現実的な第一歩
はじめに|「成功事例」ではなく「よくある業務の変わり方」を集めた理由
なぜDXの成功事例は参考になりにくいのか
業務アプリやDXに関する記事を読んでも、「すごいとは思うが、自社では難しそうだ」と感じた経験はないでしょうか。多くの企業でDX事例が参考になりにくい理由は、その多くが特定企業の成功条件に強く依存しているからです。人員規模、ITリテラシー、予算、トップの関与度合いなどが異なれば、同じやり方をなぞってもうまくいくとは限りません。
本記事が扱うのは「企業」ではなく「業務シーン」
そこで本記事では、“どこかの会社が成功した話”ではなく、現場でよく起きている業務シーンそのものに焦点を当てます。
「報告が後回しになる」「Excelが属人化する」「確認作業で時間が溶ける」——そうした多くの現場に共通する状況が、業務アプリによってどう変わりうるのかを切り取って紹介します。特定の製品や企業名に寄せるのではなく、「自分たちの業務に置き換えられるか」を重視した構成です。
読み方ガイド|全部読まなくて大丈夫です
本記事は、最初から最後まで通読する必要はありません。
自分の部署や担当業務に近い章・シーンだけ拾い読みしてください。「これ、うちのことだ」と感じる箇所があれば、それが業務改善を考え始める十分なきっかけになります。成功事例ではなく、 “自分事として想像できる変わり方”を持ち帰っていただくことが、本記事の目的です。
「うちの業務でも当てはまりそう」と感じたときに重要なのは、
いきなりツールを探すことではなく、何から考えるべきかを整理することです。
業務アプリ開発を検討する際の判断軸や考える順序については、
「業務アプリ開発は何から決めるべきか」の記事で詳しく解説しています。
1.営業部門|顧客対応に集中できない業務シーン
営業部門では「売ること」そのものよりも、その前後に発生する報告・整理・共有業務が時間を奪いがちです。ここでは、多くの現場で実際によく見られる業務シーンを切り取り、業務アプリ化によって“どう変わりうるか”を具体的に整理します。
外出後の報告が後回しになり、残業が増えていく
よくある状態
外出先ではとりあえずメモだけ取り、詳細な報告は帰社後や翌日にまとめて入力する。結果として報告が溜まり、夕方以降に入力作業が集中します。数字の集計も遅れ、管理側が状況を把握できるのは「数日後」という状態になりがちです。
アプリ化するとどう変わるか
スマホからその場で入力でき、写真や音声も添付できるようになると、「後でまとめる」工程自体が不要になります。入力の粒度は細かくなり、管理側もリアルタイムで状況を把握可能になります。
向いている業務タイプ
日報、活動報告、訪問記録など「現場発生・即時性が高い業務」。
顧客情報がExcelに散らばり、担当者しか分からない
よくある状態
顧客情報が複数のExcelファイルに分かれ、更新履歴もバラバラ。ファイル名には「最新版」「最終」などが並び、どれが正か分からない状態になります。担当者が不在になると、引き継ぎが成立しません。
アプリ化後の変化
顧客情報を一つの画面に集約し、履歴を時系列で残すことで、「誰が見ても同じ情報」を前提にできます。属人化は運用の努力ではなく、構造的に起きにくくなるのがポイントです。
フォロー漏れが起き、関係性が弱くなる
よくある状態
「連絡しようと思っていたが、他の対応に追われて忘れた」。悪意はなくても、フォロー漏れは起きます。原因は個人の意識ではなく、記憶頼みの業務構造にあります。
アプリ化後の変化
履歴とリマインドが自動で残ることで、「忘れない努力」をしなくて済むようになります。
重要なのは、管理を強めることではなく、抜けにくい仕組みを作ることです。
ツール刷新が、営業の改善意識を引き出す
よくある状態
古いツールや使いにくい仕組みは、「仕方ないもの」として受け入れられ、改善の発想自体が止まりがちです。
アプリ化後の変化
入力が楽になり、画面が見やすくなるだけで、「ここも直せそう」「こうしたらもっと良い」という声が自然に出始めます。
“使いやすさ”は単なる快適性ではなく、改善行動を引き出すきっかけになります。
顧客・案件・日報が分断され、全体像が見えない
よくある状態
顧客情報は顧客管理、案件は別表、日報はまた別ファイル。情報がつながらず、「今どの顧客がどの状況か」を俯瞰できません。
統合することで起きる変化
顧客・案件・日報がひも付くことで、状況が一目で分かるようになります。
営業マネジメントにとっては、個別管理から全体把握への視点転換が可能になり、指示や支援の質も変わっていきます。
営業部門の業務改善は、「特別な仕組み」を入れることではなく、よくある業務の流れを、少し自然にすることから始まります。次章では、製造・現場部門で起きがちな業務シーンを見ていきます。
2.製造・現場部門|「見えない」「伝わらない」業務シーン
製造・現場部門では、業務そのものは動いているのに「状況が見えない」「情報が伝わらない」ことで、判断の遅れやムダな手戻りが発生しがちです。ここでは、多くの現場で繰り返し起きている典型的な業務シーンをもとに、業務アプリ化によって何が変わるのかを整理します。
現場の進捗がブラックボックスになる
よくある状態
工程の進捗や作業状況は、実際に現場へ行くか、担当者に聞かなければ分かりません。報告は紙や口頭が中心で、タイミングも内容もばらつきがあります。結果として、管理側は「遅れてから気づく」状態になりがちです。
紙・口頭依存の限界
紙の帳票は回収・集計に時間がかかり、口頭報告は記録に残りません。情報は点で存在し、全体像として把握できません。
入力の即時性がもたらす変化
作業完了や進捗をその場で入力できるようになると、状況がリアルタイムで共有されます。「見に行かないと分からない」から「画面を見れば分かる」状態へ変わります。
不具合情報が集まらず、改善が属人的になる
よくある状態
不具合やトラブルが発生しても、「軽微だから」「忙しいから」と報告されず、そのまま流れてしまいます。結果として、改善は一部の経験者の記憶や判断に依存します。
報告されない=問題がない、ではない
情報が上がらないのは、問題が存在しないからではなく、「報告しにくい構造」があるからです。
写真・定型入力の効きどころ
写真添付や選択式入力を使うことで、文章を書かずに報告できます。
重要なのは、「正確に書かせる」よりも「まず出てくる」仕組みです。
「責めない設計」が重要
誰が原因かを問う設計ではなく、事実を集める設計にすることで、情報が集まりやすくなります。
ヒヤリハットが共有されず、再発する
よくある状態
ヒヤリハットは現場で起きていても、「書くのが面倒」「後でまとめよう」となり、共有されません。同じような事象が別の場所で繰り返されます。
入力ハードルを下げる効果
スマホで写真を撮って数項目入力するだけなら、報告の心理的負担は大きく下がります。結果として、件数が増えます。
データが文化を作る
件数が増えることは悪い兆候ではありません。「隠れなくなった」状態です。
データとして蓄積されることで、注意喚起や改善が日常的に行われる文化が育ちます。
日報が形骸化し、残業が減らない
よくある状態
一度電子化に失敗した経験から、「日報はどうせ定着しない」と諦められているケースがあります。入力は義務になり、内容は形だけになります。
技術より「導入の順序」
失敗の原因はツールではなく、いきなり全員に切り替えたことや、紙と併用したままにしたことにあります。
現場が納得する切り替え方
対象業務を絞り、紙をやめる理由を共有したうえで切り替えると、定着しやすくなります。納得感が、入力の質を変えます。
棚卸・点検が紙前提で、ミスと工数が増える
よくある状態
広い現場を移動しながら紙に記入し、後でまとめて入力します。転記ミスや読み違いが発生し、確認作業が増えます。
モバイル前提設計の価値
その場で入力し、その場で確認できるだけで、工程が一つ減ります。
紙を前提にした業務構造自体が、ムダを生んでいます。
現場主導で作れる意味
現場の動線や実態を知っている人が作ることで、「使われる前提」の仕組みになります。小さな改善でも、積み重なると大きな差になります。
製造・現場部門の改善は、「管理を強めること」ではなく、情報が自然に集まる状態を作ることが出発点です。次章では、管理・バックオフィス部門で起きがちな業務シーンを見ていきます。
3.管理部門|全社を支えるが、後回しにされがちな業務シーン
管理部門の業務は、直接売上を生むわけではありません。しかし、ここが滞ると全社のスピードと信頼感が確実に下がります。にもかかわらず、「今のやり方で回っているから」と改善が後回しにされがちなのも管理部門の特徴です。ここでは、よく見られる5つの業務シーンを通じて、業務アプリ化がどのように効いてくるのかを整理します。
申請業務が多すぎて、本来業務に時間が割けない
よくある状態
稟議、各種申請、届出対応に追われ、確認・差し戻し・問い合わせ対応が日常業務の大半を占めてしまいます。1件あたりは軽くても、件数が積み重なり、本来やるべき企画・改善業務に時間が取れません。
件数が多いほど効く領域
申請業務は「頻度が高く、型が決まっている」ため、アプリ化の効果が出やすい領域です。1件あたり数分の短縮でも、全社規模では大きな差になります。
ルールが複雑でも整理できる
承認条件や分岐ルールが複雑でも、アプリ上で整理すれば、判断は自動化できます。人が考える負荷を減らすことが、管理部門の余力を生みます。
ハンコ・紙文化が、働き方を縛る
よくある状態
申請書は紙、承認はハンコ、保管はファイル。物理的な移動が前提のため、在宅勤務や拠点分散と相性が悪くなります。
リモートと相性が悪い理由
紙前提の業務は、「その場にいないと進まない」構造を作ります。結果として、柔軟な働き方が制度上は可能でも、実務では成立しません。
統一基盤の価値
申請・承認を一つの基盤に集約すると、場所や時間に縛られなくなります。個別最適ではなく、全社で同じ仕組みを使うことが、働き方の自由度を底上げします。
経費精算が遅れ、現場の不満が溜まる
よくある状態
申請は紙、確認は目視、差し戻しは口頭。結果として、精算完了までに時間がかかり、「いつ処理されるのか分からない」という不満が現場に溜まります。
手続きの遅さ=信頼低下
経費精算の遅れは、単なる事務の問題ではありません。現場から見ると、「会社が自分たちを後回しにしている」という印象につながります。
ワークフローの本質的価値
ワークフローは効率化だけでなく、進捗の可視化が価値です。今どこで止まっているのかが分かるだけで、不満や問い合わせは大きく減ります。
一部門での成功が、他部門に広がらない
よくある状態
ある部門では業務アプリ化がうまくいっているのに、他部門には広がらず、結果として全社最適になりません。
横展開が止まる理由
原因の多くは、「仕組みが属人化している」「ルールが共有されていない」ことです。個人の工夫で終わると、再利用できません。
IT部門の「ガードレール」役割
IT部門が統一ルールや共通基盤を用意し、現場がその上で自由に作れる状態を作ることが重要です。制限ではなく、安全に広げるための枠組みです。
外注依存が続き、改善スピードが上がらない
よくある状態
小さな修正でも外部ベンダーに依頼が必要で、見積・調整に時間がかかります。結果として、「直したいが後回し」が積み重なります。
内製化=エンジニアを雇うことではない
内製とは、すべてを自分たちで作ることではありません。業務担当者が、自分たちの範囲で改善できる状態を持つことです。
現実的な内製の形
ノーコード・ローコードを活用すれば、管理部門でも改善の主導権を持てます。外注は「難しい部分だけ」に限定され、全体のスピードが上がります。
管理部門の業務改善は、目立ちにくい一方で、全社への影響が最も大きい領域です。
4. こうした業務変化を、無理なく形にするために
ここまで見てきた業務シーンは、特定の業界や企業だけの話ではありません。
日報が後回しになる、申請が滞る、情報が分断される――こうした状態は、業務の種類が違っても、構造は驚くほど共通しています。
ジュガールは、こうした“よくある業務のつまずき”を前提に設計された、業務アプリ・ワークフローの統合プラットフォームです。
特別なITスキルがなくても、現場の業務を知っている人がそのまま形にでき、同時に管理・統制が効く構造を持っています。
「全社DX」や「大規模刷新」を前提にせず、
一つの業務シーンから始めて、必要に応じて広げていける。
この記事で挙げたような業務変化を、無理なく現実にするための“土台”として使われているのがジュガールです。
おわりに|「うちでもできそう」と思えた業務から始める
業務アプリの活用を考えるとき、「全社DXを進めなければ」「大きな改革が必要だ」と構えてしまう企業は少なくありません。しかし、本当に必要なのは壮大な構想よりも、目の前の業務がどう変わるかを具体的にイメージすることです。今回紹介してきたのは、特別な成功談ではなく、多くの企業で日常的に起きている業務シーンばかりです。だからこそ、「うちでもできそう」と感じられた業務が、一番の出発点になります。
重要なのは、全社一斉に変えようとしないことです。日報、申請、報告、点検といった一つの業務が少し楽になるだけでも、現場の余力や意識は確実に変わります。その小さな変化が積み重なり、結果として業務DXが広がっていきます。全社DXではなく、業務DXからで十分なのです。
次に考えるべきは、「では、その業務にはどんなツールや開発手法が向いているのか」という段階です。業務内容や体制に応じて、どの開発手法・ツールが無理なく使えるかについては、「業務アプリ開発の手法とツールの選び方」の記事で整理しています。
できそうな業務が見えた今こそ、どれを選ぶかを考えるタイミングです。